揺るぎない師弟の絆(B3リーグ・岩手ビッグブルズ 後藤翔平)
B2復帰を果たしたものの、1シーズンで再びB3に舞い戻ってきた岩手ビッグブルズは、第7節までに11勝1敗と好調なスタートを切った。しかし、第8節に1敗を喫すると、第9節と第10節を全て落として4連敗。リーグ全体のレベルが上がっていることから、他を圧倒してリーグ優勝した一昨シーズンと比較して「今シーズンはそこまでの余裕がない」と語った鈴木裕紀ヘッドコーチの言葉通り、気の抜けない戦いが続く。 4連敗の最たる要因は得点力不足に陥ったことだった。第8節の後にクレイ・マウンスがインジュアリーリストに登録された影響は強く、4連敗中の得点は最多で62点、最少では49点にまで落ち込んでしまったが、12月6日の第11節GAME1はアースフレンズ東京Zに勝利して連敗を脱出。それも、86点を奪ってみせた。 今シーズン岩手のキャプテンを務めているのは、鈴木HCが「スーパーディフェンスマン」と称する、移籍2シーズン目の後藤翔平。今シーズンはスターター出場が多く、この試合もスターターとしてコートに立ちながら、オフェンス重視の戦略によって後半はほとんど出番がなかったが、8点リードの第4クォーター残り23秒に投入されると、マッチアップした外国籍選手のドリブルミスを誘い、コントロールを失ったボールを追って自チームのベンチに飛び込むハッスルプレーを見せた。強打した左上腕は内出血であっという間に変色したというが、幸いにも大事には至らず、試合後の筆者の取材にも応じてくれた。 「良くない試合が続いたんですが、課題としているオフェンスを練習から取り組んできて、今日は全員が攻める意識を持ってましたし、それが勝利という結果につながってみんな一安心したんじゃないかなと思います」 鈴木HCは「今は点を取ることが重要で、後藤のプレータイムが減っているのは申し訳ない」と語ったが、今シーズンは16得点を挙げた試合もある後藤に対し、「最後にプレーオフを勝ちきるために、全員の力が必要。彼は今のバスケットにもアジャストする能力はありますし、それだけの経験もある」と信頼を寄せる。そして後藤も、「ディフェンスに重きを置いてプレーしてきた中でも、僕が点数を取らなきゃいけない場面もある。ちょっと壁に当たってる部分もあるんですが、まだ32歳なので、今はもう一段階成長できるチャンスが来ている」とポジティブに受け止めているところだ。 4連敗でチームの状況が良くなかった中、後藤にはキャプテンとしてチームの雰囲気を高める役目もあった。その点を問うと、島根スサノオマジック時代のチームメートであり、同い年で仲も良い安藤誓哉と連絡を取った際に「おまえのカラーで、おまえらしく盛り上げて元気にやれば、みんなついてくると思うよ」という言葉をかけられたことを明かした。それを受け、後藤は「声を出すことを心がけて、落ち込んでる選手がいたらポジティブな声をかけて、自分も頑張ってプレーしよう」と改めて前を向くことができたそうだ。 後藤と鈴木HCの縁は、今や切り離せないものになっている。後藤がプロとして第一歩を踏み出したのが金沢武士団で、その指揮官が鈴木HC。B1昇格初年度の島根が鈴木HCを招聘すると、鈴木HCが連れ立っていくような形で後藤も島根の一員となった。鈴木HCの退任後も後藤は島根に残り、計6シーズンを過ごしたが、岩手の指揮官となった鈴木HCに招かれ、三度共闘することとなった。後藤のプロでの成長を間近に見てきた鈴木HCは、その道のりを「順風満帆だったかというと、決してそうではなかったと思います」と述懐し、その道のりにこそ後藤の良さが表れていると感じている。