真冬の夜にSL撮影会 昭和浪漫溢れる大井川鐵道ナイトトレイン
「表情が違うのが魅力」「ほのぼのとした鉄道」
名古屋から参加の20代の男性。撮り鉄ではなく、SLの写真を趣味で撮っているという。ナイトトレインは毎冬応募しているが、去年は抽選にはずれてくることができなかった。 SLを撮る魅力について聞くと、「気温や風向き、乗務員の癖で煙の出る量が違ったり。写真を撮るたびに違う表情を見せてくれる。その瞬間を切り取るのが楽しい」と熱く語ってくれた。 数少ない女性参加者の中には、障害のある息子さんと一緒に参加の母親の姿も。「息子はSLが大好きなので大井川鐵道によくきます。大井川鐵道の職員の方が気さくに息子に話しかけてくれるので、安心して楽しめます。ほのぼのとしたいい鉄道です」と話していた。
気がつくととっぷり日が暮れて、車窓に映る大井川や山間の風景も夜のしじまに浮かんでいる。外は寒そうだが、客車の中は蒸気機関車のスチームで心地よい暖かさだ。3両編成の客車は「一等車」「二等車」「三等車」と記され、木製の4人掛けの座席と網棚に昭和が漂う。 車内には「昭和10年代から20年代にかけて東海道本線の最新標準型として活躍した形式です」との説明書きも。大井川鐵道によると、客車は旧国鉄時代によく見られた、最後尾に貫通扉のない客車を充当した編成。車内アナウンスのチャイムも旧国鉄列車のチャイムを再現したという凝りようだ。
凍てつく寒さも気にせず屋外転車台で熱撮
1時間超の「昭和の旅」を楽しむと、C10形8号機は陽がすっかり落ちた千頭駅に到着した。降車すると寒さが容赦なく襲ってくる。 参加者は千頭駅の待合室に集合し、そこで2班に分けられた後、支給されたヘルメットをかぶって、いよいよ夜のSL撮影会に臨んだ。 まずは千頭駅のホームでC10形8号機と客車3両を撮影。その後、千頭駅構内にある、明治30(1987)年に英国で製造された人力で回転させる転車台に移動し、転車台の上のC10形8号機をじっくりと撮影。C10形8号機は、時折、気笛を鳴らしたり、煙を吐き出したりしてサービスしてくれる。 冬の凍てつく寒さも気にならない様子で、ヘルメットをかぶった参加者たちは、SLの周りに三脚を立てて制限時間ギリギリまでシャッターを切ったり、音を録音したりしていた。皆、ヘルメットをかぶって熱心に撮影していて、知らない人が見たら鉄道マンが作業をしているように見えたかもしれない。