<英総選挙>ユーロ圏撤退か残留か EU離脱の方向性が焦点
世論調査では野党・労働党が激しい追い上げ
度重なるテロによって、国内の安全に関する予算の大幅な削減の是非が総選挙の新たな争点となった。メイ首相が総選挙前倒しを発表した際にイギリス国内外のメディアのほぼ全てが、「政権基盤を強固なものにしたいメイ首相がこの時期に総選挙の実施に踏み切ったのは、今選挙を行なえばほぼ間違いなく保守党が大勝すると確信を抱いたからだ」と伝え、実際にイギリス国内の複数の支持率調査でも保守党は労働党を大きくリードしていた。 しかし最大で20ポイント以上開いていた保守党と労働党との支持率の差は、テロ事件も影響してか、選挙直前になって差が急速に縮まりつつある。13の団体や調査会社が実施した最新の支持率調査では、最も差が大きなもので保守党が13ポイントリード、平均すると保守党のリードは6.3ポイントとなっている。 選挙前の保守党の議席は330。下院の過半数は326議席だ。EU離脱に関する交渉を円滑に行うため、これまでよりも多くの議席数を獲得する必要に迫られているメイ政権だが、議席の過半数を獲得できず、僅差で第一党を維持せざるを得ない状況に直面した場合、EU側との交渉はこれまで考えられていたよりも長い時間がかかることになる。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト