<英総選挙>ユーロ圏撤退か残留か EU離脱の方向性が焦点
3か月に3回、相次ぐテロが争点の一つに
EU離脱や保守党政権による財政緊縮策の是非が争点となってきた今回の総選挙だが、選挙が実施される直前になって、テロ対策も大きな争点の一つとなった。イギリスでは3月にロンドンのウエストミンスター宮殿近くで50人以上が死傷するテロ事件が発生。5月22日には中部マンチェスターで行われたコンサートの会場で自爆テロが発生し、8歳の女児を含む22人が死亡し、100人を超す負傷者を出す大惨事となった。マンチェスターで発生したテロ事件から2週間後となる6月3日には、ロンドン中心部のロンドン橋付近で3人のテロリストが車で次々と通行人らをはね、その後ナイフで周辺にいた人たちを襲い、50人以上が死傷している。 マンチェスターの事件では、警察の対応が後手に回った背景に、メイ首相と保守党の政策が影響したと指摘する声もある。英警察組合のスティーブ・ホワイト議長は先月24日、保守党政権がスタートした2010年から2万人以上の警察官が人員カットの対象となり、毎年4パーセントの予算がカットされている実態を明らかにしている。警察の人員・予算カットにゴーサインを出したのは、2010年に内務相に就任したメイ氏であった。2015年には、「予算カットで地域パトロールの回数が減ると、テロを未然に防ぐことはより難しくなる」と、マンチェスター警察がメイ氏本人に警告していた。労働党はマンチェスター事件後、保守党政権による財政緊縮策を激しく非難している。 労働党のコービン党首は4日にイギリス北部カーライルで行った演説の中で、「少ない予算で国民を守ることには無理がある」と語り、警察や情報機関に対する予算・人員カットの見直しを訴えた。3日にテロが発生したばかりのロンドンでは、カーン市長(労働党)が6日に声明を発表し、「保守党が打ち出した予算削減案が実践された場合、ロンドン市警察だけでさらに4億ポンドの予算がカットされ、最大で1万2800人の警察官が職を失うことになる」と警告。カーン市長はメイ氏が内相時代に打ち出した警察予算削減案が続いた場合、テロを防ぐことは今よりも困難になると断言しているが、メイ首相は内相時代に決定した予算削減案の今後については言及を避けている。