ネットワールド、カラーが膨大な作品資産アーカイブに「Wasabi」を採用
ネットワールドは9月19日、映像制作会社であるカラーのストレージ環境再構築プロジェクトに、ネットワールドが提供する米Wasabi Technologies製クラウドオブジェクトストレージサービス「Wasabi Hot Cloud Storage(Wasabi)」が採用され、稼働を開始したと発表した。 カラーは2006年の設立以来、「エヴァンゲリオン」シリーズを始めとする多数の作品の静止画や動画ファイルなどをアーカイブしており、その容量は500TBにのぼる。従来は、多数のHDD、SSDから構成されるQNAPのNASストレージ(台湾QNAP Systems製)をオンプレミスで運用していたが、HDDの不具合が生じるたびにデータ消失の不安や、交換に1~2週間を要するうえ、リビルド中はNASのパフォーマンスが落ち、社内ユーザーの業務効率に影響をおよぼすという課題があった。保守満了にともなうリプレースメントの際、オンプレミス環境間でのデータ移行に6カ月もの期間を要するという課題もあった。そこでメーカー保守満了を迎えた23年、ストレージ環境の抜本的な刷新に着手した。 新しいストレージ環境は、アーカイブ用のクラウドストレージのWasabiと60TBのQNAP NASを接続している。当初大手パブリッククラウドのクラウドストレージを検討したが、ストレージ使用料金に加え、データを取り出す際にも料金が発生するため、作品を再展開する際などにアーカイブデータをダウンロードする頻度が高いため、月額ダウンロード料金が予測できないことがボトルネックとなった。これに対して、Wasabiは、下り転送料やAPIリクエスト料金が発生しないのが特徴で、シンプルにコストを見積もることができる。 Wasabiの無償トライアルによる事前検証では、WasabiとQNAPの接続が非常に容易であり、万一、QNAPに不具合が生じた場合でも、新しいQNAPに迅速に変更できることを確認。また、オンプレミスシステムと比べても、ほぼ遜色ないレベルのパフォーマンスが得られた。 カラーでは、23年12月にシステムテストを終えた後、今年に入ってWasabiへのデータ移行を開始。1Gbpsのインターネット回線を使い1日約3TBの高速転送により、6月時点で300TBの移行が終了している。現在、10Gbps回線を準備中で、それが開通すればさらに転送スピードを上げることができる。 データ資産をWasabiにアーカイブすることで、HDD障害対応やハードウェア更改対応から解放されると同時に、Wasabiは管理画面がわかりやすく、操作性に優れていることから、ストレージの管理運用負荷を約80%削減できると期待している。また、HDDの不具合の度に悩まされてきたアーカイブデータ損失の不安からも解放された。 カラーは、複数の制作拠点があり、主要な拠点とは専用回線を敷設してアーカイブデータを利用できるようにしていたが、新しいストレージ環境により、インターネット回線だけで、どの拠点からもWasabi上のデータを利用することが可能となる。また、Wasabi上のデータを2次アーカイブする案も検討しており、オンプレミスで大量のハードウェアを運用管理する負荷が減ったことで、こうした発展的な企画を考えられる余裕が生まれている。 システムの提案・導入は、ネットワールドのパートナーであるTooが担当し、Wasabiの導入実績が豊富なネットワールドの充実した技術支援が評価されている。