「ハゲ」「短足」ネタはどこまでOK?ノンスタ石田が考えるコンプラの境界線
講師としてNSC生を見ていると、ボケの能力値は低いけど伝えるのが上手い子、伝えるのは下手やけど、うらやましいくらいのボケを生み出す子、シチュエーションコントを考える能力は高いのに、絶望的に演技が下手な子……いろいろです。 彼らこそお笑いの未来。NSCで力をつけて、どんどん活躍していってほしいと思っています。 ● 自虐ネタ、ハゲネタ……時代の変化とお笑いについて 近年、コンプラの観点から「NGワード」とされるものが増えています。個人的には、当事者が自分を何と表現しようと自由やと思います。たとえば、ハゲている人が自分のことを「ハゲ」と言っているのを、「コンプラ的に問題がある」なんて言っても、あまり意味があるようには思えません。 もし言葉が差別を助長するようなことがあるのなら、ある程度は制限したほうがいいとは思います。その反面、単に言葉を制限することで世の中がいい方向に行くんやろか、という疑問は残ります。 僕はよく井上の足の短さをいじります。「短足」など直接的な表現は使わないものの、「太もも忘れてきたんか」「めっちゃ高いところから飛び降りたんか」といった表現で小馬鹿にします。 これは僕と井上の関係性で言っていることであり、その言葉には嫌な感情はこもっていません。お客さんの目にも、「石田と井上がじゃれ合っている」としか見えないから、笑ってもらえる。でも見る人が見たら、いつ突っつかれるかわかりません。僕自身も、ギリギリのところにいる自覚はあります。 僕が舞台のほうが好きなのは、そのあたりにも理由があります。 テレビは「目に入るもの」ですが、劇場はお客さんが自ら選んで「見に来るもの」です。テレビは、全国津々浦々で大勢の目に触れているだけに制限が多い。それに比べて、基本的に「お金を払って見に来ている人たち」しかいない劇場のほうが自由度は高いのかもしれません。 先ほどいったように、テレビで漫才をやるときは、台本もしくは動画の提出を求められます。ネタで使われている表現をすみずみまでチェックされて、「これはいじめを誘発する表現なのでNG」「子どもが見ている時間帯なのでNG」など、指摘されたところは直さなくちゃいけません。