「ハゲ」「短足」ネタはどこまでOK?ノンスタ石田が考えるコンプラの境界線
ボケという違和感満載の変化球にツッコミを入れる、その流れに必然性を持たせることができなくては、いくら大きな声で突っ込んだり、ボディランゲージを激しくしても笑いはとれません。お客さんは「なんでこの人、こんなに怒ってるの?」と思うだけでしょう。 ボケ1つ、ツッコミ1つでぶつ切りにして笑いをとっているのではなく、会話という流れのなかで笑いを取るのが漫才です。もちろん笑いが起こるのはボケとツッコミの箇所ですが、そこでウケるためには、本当は「ウケていないところ」の持って行き方こそ大事なんです。 情報が多すぎる環境だと、実は物事の吸収率は悪くなるのかもしれません。先ほど、サブスクや見逃し配信、など、お笑いコンテンツへのアクセスがよすぎるのも考えものといったのはこういうことです。 今のNSC生は勉強熱心で、勘どころもいいので、入学直後であっても、一見上手くできていそうなネタをします。全体のレベルは僕らの若手時代より、確実に上がっているでしょう。でも、彼らはまだ本当の意味では、漫才師としてのスタートラインには立てていません。 同期との激しい競争に揉まれ、すぐ近くにある寄席でとんでもない波を起こしている先輩を目の当たりにし……という数年を過ごすうちに、「漫才の基本」をつかんでいく。そこが本当の出発点なんやと思います。 ● 「台本の書き方」も知らないといけない時代 NSCでは、僕は台本の書き方から教えます。ネタの台本を提出してもらい、1つひとつの表現から全体の流れまで徹底的に添削しています。こんなことをやっている人はこれまでいなかったそうですが、せっかくお金を払って学びに来ているのだから、ちょっとでも得して帰ってほしいという気持ちでやっています。 今はテレビ出演の前に台本の提出を求められることが大半です。台本がないのなら、ネタの動画を撮影して提出しなくてはいけない。ただ制作サイドにチェックしてもらうためだけに動画を撮るなんて面倒でしょう。昔はともかく、今は台本の書き方くらい知っておいたほうがいい時代になっているということです。