“残留”断りソフトバンク就職「現場はもういい」 3度目戦力外…29歳が異例の転身
驚いたファンの熱量…「ありがたい気持ちと申し訳ない気持ち」
新たな挑戦を前に「楽しみもあるけど、やっぱり不安ですよ」とも明かす。「最初は全く分からない中でのスタートですけど、みんなできているので、やれるのかな」とうなずく。新たな職場では営業職を担うことになる。「人と話すのは大丈夫ですけど、パソコンを使ったり、プレゼン用の資料を作ったりとかが一番不安です。パソコンを使ったのは大学でレポートを出す時くらいですよ」。少し表情を緩めながらも、新たな一歩への覚悟を口にした。 ソフトバンクに移籍して最初に衝撃を受けたのは熱心なファンの多さだった。「差し入れの数とか、支配下の選手を見ているとすごいですよね。でも、1軍に1回も行ったことがない選手にも、熱心なファンがいるじゃないですか。ホークス、すごいですよ。楽天の時は2軍でファンの人と会う機会があまりなかったから、筑後に来て『こんなにいるの?』みたいな驚きはありました」と目を丸くした。 懸命にプレーした2年間で、声を掛けてくれるファンも徐々に増えていった。「ありがたかったですね。こういうのは初めてでしたし、育成なので恥ずかしいって言ったらあれですけど。わざわざ僕のために球場に足を運んでくれた方もいましたし。とてもありがたい気持ちと、活躍できなくて申し訳ない気持ち……。両方ありますけど、とても嬉しかったです」。素直に感謝の思いを明かした。 楽天から戦力外通告を受けた際も、一度は引退を決意し、就職するつもりだった。それが、ソフトバンクからのオファーで再びユニホームに袖を通すことができた。「本当だったら一昨年で終わるはずだった野球を、もう2年もできた。いろんな人に出会えたのが一番良かった」と静かに笑みを浮かべた。「新しい道で頑張っていきたいと思っています」。楽しみと不安を抱きながらも、マウンド上での姿と変わらないクールさで新たなステージへと歩みを進める。
上杉あずさ / Azusa Uesugi