600年続く福岡県の八女茶栽培、「八女伝統本玉露」は手間がかかりすぎて生産農家が減少。最も美味しく味わうには「冷ます」のが大事?プロが教える楽しみ方
◆高い評価を裏付ける品質へのこだわり 八女地域の玉露は、古くから山間地域を中心に栽培されてきたため、他産地に比べると生産量が少なく、全国的な知名度が高まらない状態が続きました。産地として存在感を示すためにも、他産地を圧倒するような高品質の玉露を生産しなければならないという背景があったのです。 1970年代半ば以降、ほかの玉露産地では機械化を推し進め、効率的な生産体制をとるようになりますが、八女はそうした動きとは一線を画し、品質へのこだわりと伝統的な技法を守り続けることで差別化を図ってきました。 全国の生産者がお茶の出来ばえを競う「全国茶品評会」で毎年、農林水産大臣賞を受賞するようになったのは、こうした取り組みによるものです。 玉露部門における最高峰・農林水産大臣賞を初受賞するのは1967年。特に平成に入ってからは、毎年のように同賞や、入賞した玉露が一番多い産地に贈られる産地賞を受賞しており、名実ともに八女に伝統本玉露ありとの高い評価を得ています。
◆日本茶で初のGI登録 2015年、八女伝統本玉露はGI(地理的表示)保護制度の第5号として登録されました。 全国に流通する農産品や食品のなかには、「神戸ビーフ」や「夕張メロン」のように、地域の風土に根づく独自の環境や、古くから伝わる製法によって作られる唯一無二の個性を持つものがあります。 GIはそれらを知的財産として保護する制度として創設され、八女伝統本玉露の登録は、日本茶で全国初となる栄誉あるものです。 立地条件や伝統的な栽培方法、高い加工技術と組み合わせて作られていること、また、長年にわたって、全国茶品評会などで高く評価されてきたことがGIの認定につながったのです。 「八女伝統本玉露」の条件 (1)自然仕立て(かまぼこ型でない)の茶園 (2)肥培管理が十分行われた茶園とする (3)被覆は棚掛けの間接とし、稲わらを使った資材とする (4)被覆の期間は16 日以上とする (5)遮光率95 パーセント以上 (6)摘採は手摘みとする (7)茶葉が硬化しないよう、適期に摘採する (8)生葉(なまは)管理に注意し、欠陥なく製造されたものとする 登録に向けての活動は、八女伝統本玉露推進協議会が推し進めてきました。生産者、茶商、行政により構成されています。 あまりにも手間や経費がかかることから、八女伝統本玉露に携わる茶農家は減少傾向にあります。GI登録前から「八女伝統本玉露を守り抜く」ことへの危機感がありました。このことから、生産・流通・行政が一体となって、ブランド化を推進してきたものです。