南海トラフ地震 「臨時情報」空振りも地震対策強化につなげる姿勢が肝心
「それぞれの地域で悩む過程が必要」
――事前対策を進めていく中で、環境整備とか避難所の確保とかが難しい地域もあると思うが、そういうところの援助であったり、支援だったりとかはどうお考えですか。 福和「まずはそれぞれの地域ごと、組織ごとにやれるだけのことは自分たちでまずやることが基本だと思いますが、できない人たちもいますし、それができない地域も、組織もあります。そういった場合には、当然ですが、国や自治体は、それを支援するという形になってくると思います。ただ、今回はあらゆることを最初から全部国に委ねるのではなく、まず自分たちでできることについては自らやってみる。それを考えてみる。それでできない部分を国に補ってもらうという態度が必要だと思います。というのも、特に半割れケースの場合には、莫大な被害が起きている中で、被害がまだそんなにおきていないところに対して支援するということになる。当然ですが、甚大な被害が起きている側への支援を重視しつつ、そのほかのところにも残った力で支援することになりますから、どうしても支援の力は不足するので、できる限り、われわれができることについては、住民、企業、自治体で頑張っておくということを基本にすることがよいと思っています」 ――ガイドラインの作成も急がれると思うが、どういったスピード感でどのくらいの時期までに? 福和「今日のワーキンググループでは具体的な時期については、明快には示されていませんので、今、いえることについては、速やかにガイドラインを作るということをする状況にあるということだと思う。その期限は、今日は明快にはすることはできない状況だと考えています。ただ、それが1年なんてことをしていては当然駄目なわけですから、数カ月という中の短めか長めかはちょっと明快にお答えできないですが、そういう単位ではやっていかないといけないとは感じている」 ――半割れケースの場合、1週間さらにプラス1週間とあるが、社会的な受忍限度の中ではかなり負担になると思う。そういうところで、当事者意識をもってあたってほしいというが、どうすれば当事者意識を醸成することができるか、理解を求めていけるか。 福和「ちょっと本音で語るが、メディアの方々に当事者意識ができることが何よりも最初だと思う。メディア側の方々も一番、自分たちがこの情報を住民の方々との間でやりとりをしないといけない方々になりますから、たぶん、私たちはメディアの方々と一緒に、どういうふうにすれば、まずはメディアの方々がこの問題について当事者意識をもって、少しでもこの国の平静さを保ちつつ、被害を減らしていくことができるかを、一緒に考えさせていただけるといいと思っています。そのことができれば、当然ですが、メディアの方々と一緒に社会に対して発信の仕方を工夫できることになりますから、その時点であまねくすべての人たちが自分で考えていく時なんだ、というふうにわかっていただけるような発信の仕方を一緒に考えたい、と思っています。そうしない限り、この巨大災害に対しては立ち向かえないので。誰かだけで解決できる問題ではない。あらゆる人たちが自らの命を守り、その後、支援を受ける側ではなく、支援する側になるような形に直していくきっかけづくりにしたいと思っています」 ――どうしても避難所が足りないとか、実際に運用していくと本当にこんなにうまくいくのか、など地域の方々から困ったという話も聞く。そういったところを考えた上での支援の在り方が、一つ進めていくうえでキーポイントになるのかなと思うのですが。 福和「当然ですよね。こんな巨大災害は100年に1回しかないわけですから、そういう災害に対して足りないものだらけなんだと思います。足りないものについて、どうやってまずはそのことに気が付いて、その中でとっても大事な足りないものについては、事前にそれを足りるようにしておかないといけないですし、一方で何から何まで望んでも、リソースも足りないわけですから、それは無理な部分については、どこまでわれわれは我慢ができるのか、それはそれぞれの地域ごとで悩む過程はどうしても必要だと思います。悩みをいっぱい持っている中で、結果として当事者意識が出てくるわけですから。この報告を受けて、一度、社会の側で悩む機会を持ち、解決ができないことについては、再度、行政の側にボールを返して、また、その問題について解決策を考えていく。多分一回で解決できるような簡単な問題ではないので、これから少しより良い答えを見つけ続けていくことだと思います。そうは言っても、今回、一つ目の答えをとにかく比較的短い時間で用意できたということは、一歩進歩したんだというふうには思っている」