ゲンスラー委員長、あなたがいなくなるのは寂しい(はずがない)
ゲンスラーSEC委員長が10月9日に暗号資産(仮想通貨)について述べたコメントは、同氏がこれからもその職にとどまるべきだと業界内の誰かを説得するものではなかった。 ● SEC(米証券取引委員会)のゲイリー・ゲンスラー委員長は9日、ニューヨーク大学ロースクールで行われたイベントに登壇、そのコメントは、ようやく自分の考えを述べる準備が整ったかのようだった。 関連記事:暗号資産が「通貨になる可能性は低い」:ゲンスラーSEC委員長 暗号資産についてのゲンスラー委員長のコメントは広範囲にわたり、ときにはかなり誤ったもので、業界の将来性に対して非常に厳しいものだった。 ゲンスラー委員長は、かつてグリーンスパンFRB議長と同様に、自由に意見を述べることはあまりない。同氏は慎重なテクノクラート。だがこの日は違った。 同氏は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(EHT)のような暗号資産が決済手段として使われる可能性は低いと述べた。 「私はマサチューセッツ工科大学(MIT)などでこのようなことを教えたことがあるので言わせてもらうが、この議論は文字通りプラトンやアリストテレスの時代にまでさかのぼる。これは3000年の歴史だ。何百もの大国、何千もの国民国家が存在したが、地理的な経済国家ごとに1つの通貨を持つ傾向がある。複本位制を採用しない傾向さえある」 つまり、ゲンスラー委員長は国家が通貨を管理し、国家が発行する通貨が1つだけの方が経済はうまく回ると考えている。これは事実かもしれないが、SEC委員長としてはかなり大胆な発言だ。同氏は、実現可能かどうか、あるいは将来的により良いものになり得るかどうかではなく、電気、もちろんインターネットなどは存在もしない過去の時代を指針としている。
80年前の法律で十分?
またゲンスラー委員長は、暗号資産業界には「多くの詐欺師、ペテン師、スキャム」が蔓延しており、これは自明のことだと述べた。そして「失礼ながら、“2024年”にこの分野の指導的立場にある人たちは、現在、刑務所にいるか、身柄引き渡しを待っている」と続けた。 これはまったく真実ではない。「指導的立場」の定義は意見が分かれるかもしれないが、SECによる数々の取り締まりの後も、業界リーダーのほとんどは自由の身であり、積極的にビジネスを展開している。チャンポン・ジャオ氏は去った。ヴィタリック・ブテリン氏は自身の「ワールド・コンピューター」を孵化させている。コインベース(Coinbase)のブライアン・アームストロング氏は結婚したばかりだ。 もちろん、サム・バンクマン-フリード(SBF)や2022年当時の詐欺師の何人かは刑務所にいる。しかし、業界でSBFを指導者と見なす人はほぼいない。 最も重要な問題、つまり、トークンは証券なのか、トークン発行は投資契約にあたるのかについて、ゲンズラー委員長は規制当局が新しい技術や市場の状況に合わせて法律を解釈したり、新たに法律を制定する可能性について、何の期待も示さなかった。同氏は、1940年に最高裁が認めた「ハウィーテスト(Howey Test)」で今でも十分と述べた。 「投資契約とは何かという、長年かけて信頼されてきたこのテストを暗号資産が満たすかどうか疑問に思っている人がいるなら、こう考えてほしい。誰があなたの法律事務所との契約書に署名しているのか?中心となる企業が存在し、誰かがその契約書に署名している。誰がブローカー・ディーラーのドアを叩いて、“私の特定の資産で市場を作ってもらえないか?”と頼んでいるのか?共通の企業が存在しないというのは論理に反する」 ゲンスラー委員長は、この日、難しいことを何とかやり遂げた。暗号資産に関しては比較的幅広い考えを示したが、米国で暗号資産ビジネスを構築しようとしている人々に対しては、「80年前に作られた法律を見ろ」と言う以外には、何の明確性も示さなかった。 SEC委員のマーク・ウエダ(Mark Uyeda)氏がFoxに語ったように、ゲンスラー委員長の在任期間は「暗号資産業界にとって災害だった」。 暗号資産業界の人々は多くの点で意見が分かれているが、ゲンスラー委員長については、珍しく一致している。幸運なことに、ゲンスラー委員長は任期が終わりに近づいていることを自覚しているため、より幅広い姿勢を見せ始めているようだ。 |翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部|画像:ゲンスラーSEC委員長(screen capture, House Financial Services Committee)|原文:Gary Gensler, We’re Gonna Miss You (Not)
CoinDesk Japan 編集部