ベルギーGPの隔年開催決定……ここから見えてくる、F1の将来の姿
■イモラの将来は?
スパの契約期間は、他のヨーロッパでのレースも隔年開催となり、ローテーションシステムに組み込まれるということを裏付けるモノである。となれば、この枠に入るのがどのグランプリになるのかだろうか? 2026年からはスペインGPがマドリードで開催されることになる。しかしこの2026年に関しては、現在スペインGPを開催しているカタルニア・サーキットの開催契約も残っているため、スペインで2戦開催ということになるはずだ。となれば現行のグランプリを1戦減らすということにならざるを得ない。 エミリア・ロマーニャGPを開催するイモラ・サーキットは、今季限りで開催契約が切れることになっている。またメキシコシティGPも今季までの契約となっているが、契約を更新できる可能性はこちらの方が高いと見られる。 F1のステファノ・ドメニカリCEOは以前からイタリア国内で2レースを開催するのは難しいと主張してきた。モンツァでのイタリアGPは、昨年11月に2031年まで開催契約を延長済み。それを考えれば、イモラの将来が明るくはないということは明らかだった。 イモラは、インフラやファンへのおもてなしという面で遅れを取っているサーキットのひとつであると言える。それを考えれば、スパとのローテーション開催候補となるには弱いのは間違いない。
■スパ隔年開催が2028年からになる理由
スパが6年中4戦開催する契約を交わしたことは、実際にはローテーションシステムの施行まで2年の猶予が持たされたということにもなる。これはおそらく、現在F1新規開催を求める他のグランプリの準備が、2027年もしくは2028年まで整うことはないということを示唆している。 新規開催を求める国や地域は、キディヤでのサウジアラビア2戦目のグランプリだけでなく、タイや韓国、ルワンダ、大阪など。ドメニカリCEOは35以上の国や地域と話をしていると明かしている。しかしいずれも、まだ計画の初期段階である。 これらのうちどのグランプリの開催が実現するのかということを推測するのは時期尚早。しかもキディヤの巨大プロジェクトを除き、サーキット建設が着工された候補地はいまだにないのだ。すでにサーキットを持っている南アフリカやアルゼンチンなども開催に名乗りをあげているが、政治的な駆け引きを疑ってかかるのが賢明であろう。 どのグランプリが新たに開催権を得るかは分からないが、それでもスパが隔年開催となったことで、F1は新たな市場に打って出るための”柔軟性”が、カレンダーに出来上がったということは間違いないだろう。 2023年には、南アフリカGPの復活が叶わず、ベルギーGPの将来が救われたという事例があった。それを考えれば、前述のような新規開催グランプリが実現しなかった時に、イモラがその穴を埋める可能性はあるかもしれない。 しかし代替開催の候補地としてイモラよりもはるかに強力なサーキットがある。それはトルコだ。 イスタンブールパーク・サーキットは、コロナ禍でフライアウェイ戦がほとんど開催できなかった2020年に、トルコGPを開催した。急な開催決定だったにもかかわらず、サーキット側はそれに見事に対処してみせ、その翌年にもトルコGPが開催された。しかもトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は昨年、FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長とこの件について話し合っており、F1がトルコに戻ることを熱望していると言われている。サーキットの運営会社も、F1開催を復活させることを目指すと明言している。 なおトルコの隣国であるアゼルバイジャンGPも、2026年限りで現行の開催契約が切れることになっている。しかしバクーとしては契約を延長することを目指している。 今回明らかになったスパの隔年開催。このローテーションシステムにどのレースが加わるのかはわからずとも、24戦という限界を超えずに、より多くの世界都市に進出しようとするF1の画期的な第一歩と言うこともできるだろう。そしてF1を開催することの需要が世界中で高まっていることを考えると、これは最後ではないだろう。
Filip Cleeren, 田中健一