10年以上探してプリムス「ロードランナー」を入手! 大分県USA市のクルマ屋さんが愛車に選んだマッスルカーとは
アメリカのクルマがマッスルカーと呼ばれる理由とは
1960年から1970年にかけて誕生した、ハイパワーなV型8気筒エンジンを搭載する後輪駆動の2ドア車のことを、アメリカでは「マッスルカー」と総称しています。ハンドリングは気にせず、シンプルにビッグパワーで速い直線番長。この逞しさや猛々しさを「マッスル(筋肉質)」という言葉で表現したのでしょう。今回紹介するプリムス「ロードランナー」は、当時高額になり過ぎていたそれらの車両のアンチテーゼとして、若年層でも手が届くように安価な価格設定で世に解き放たれたクルマでした。 【画像】車名の由来はワーナー・ブラザースの人気アニメ! プリムス「ロードランナー」を見る(11枚)
三菱やAMCのジープにハマった20代
2024年5月5日に熊本県阿蘇郡にある瀬の本高原で開催された「瀬の本グランプリ 2024」に参加した主流は国産車。次いで欧州車とアメリカ車が同数ぐらいのイメージだった。その中で、全長5mを超える大きなプリムス「ロードランナー」が会場内で目立つ存在だったのは間違いない。 ロードランナーのオーナーは、小野賢一郎さん。どことなく某大御所人気タレントに似た面影があり、この愛車と並ぶ姿がとても似合っていたのが印象的だった。 「このスクエアで大きいボディシェイプと、その中にある丸目4灯のデザインが大好きなんです。同じような時代だとダッジ チャレンジャーやチャージャーも顔つきは好みですが、できるだけ人とかぶらない車種に乗りたいなという思いがありまして。10年以上探して、ようやく2年ほど前に手に入れることができました」 小野さんの大本命は、じつはダッジ「コロネット」だった。アメリカ在住の友人に探してもらっていたが、車両の価値が上がったことで現地価格が急騰。さらに日本の物価の変動も大きく変化したことで、現地からの輸入は断念。ダッジと同じクライスラー系列で、いわゆるBボディという構成の兄弟車のロードランナーを国内で探したところ、アメリカ車に強い関東のお店で委託販売車両ありの情報を入手。結果的にその車両を購入したのだった。
低燃費な大排気量車の維持コストは、地方在住者の悩み
大分県豊後高田市出身の小野さんは、じつは自動車修理や販売、鈑金業を営むこの道のプロ。大分県宇佐市で「USA BASE BODY SHOP ONO」として活動中なのだ。ちなみに「USA BASE」の読み方は、「ユーエスエー ベース」ではなく宇佐市にかけて「ウサ ベース」。若かりし頃に三菱やAMC「ジープ CJ-7」に触れてアメリカンなクルマ文化の魅力を知った小野さんにとって、宇佐市はいろいろな意味でその文化を楽しみやすい環境だった。 「高校を卒業してすぐに上京しました。当時は横浜ナンバーのクルマに憧れていたので、住まいを横浜市に構えました(笑)。日産の工場で勤務したり、自動車修理業や鈑金塗装業を掛け持ちしたり。趣味で乗っていた三菱ジープの面倒を見てもらうために訪れた八王子市にあるプロショップ、マグナムフォーバイフォーで愛車のチューニング費用捻出のために休日アルバイトで雇ってもらったりと、いろいろとお世話になりました。結果的にいろいろな技術を習得後に、実家の鈑金業を継ぐために大分に戻ったのです」 そんな小野さんに、関東と比べると九州のイベントで見かけるアメリカ車乗りのユーザーの絶対数が少ない印象があったので、その疑問を問いかけてみた。 「アメリカ車は大排気量のパワーを楽しむのが醍醐味ですが、それゆえに燃費が悪いし税金が高いのです。折からの燃料費高騰という問題もあって、維持費が高額になるのがネックですね。私たちのような地方在住者にとっては、収入の問題もあります。横浜近郊で生活した経験があるため、大都市と地方の賃金格差が大きいのも実感しています。 しかも、田舎ではクルマ移動が日常。マッスルカー1台で日常をこなすのは大変だから足グルマも買う。さらに家族がいれば、1人1台は必要な状況です。そんな環境で趣味グルマを所有するということは、とくに維持費が必要なアメリカ車はハードルが高くなるのは事実です」 そんな状況ではあるが、USA BASE BODY SHOP ONOの代表として少しでもアメリカ車普及活動に貢献しようと、小野さんは日々努力しているのだ。
酒寄俊幸