ドコモと連携、共創力で宇宙ビジネスの“革命”へ インターステラが描く宇宙輸送・通信の未来
世界初の人工衛星技術が切り開く 宇宙通信とユビキタス社会の未来
――6月、総務省から国立の5大学とともに高速衛星通信技術の確立に向けた研究事業を受託しました。ISTが手掛けるフォーメーションフライトの技術は、他国を含めた衛星通信市場のなかで、どんな優位性がありますか? 稲川: 多数の人工衛星が電磁石の力のみで一定の間隔や隊形を保って編隊飛行するフォーメーションフライトは、日本発で世界初の技術です。当社はこの技術の社会実装を目指しています。宇宙にモノが運ばれる時、折り紙の展開方法が有名です。(輸送するものを)ロケットに積むときは、小さくしておく必要があり、折り畳んでいたものをまた展開できる折り紙のような技術が有用です。 ただこの展開方式には限界があって、アンテナで言うと、例えば小型衛星だと3メートル、大型衛星でも十数メートルぐらいが上限です。フォーメーションフライトは、その上限がなくなるように折り畳み方式ではなくて、それぞれの超小型サイズの人工衛星群が大規模なアンテナを構築し、通信衛星の機能を持ちます。 実際にそのアプリケーションビジネスとして考えた時に、通信領域が非常に大きな事業領域です。NTTドコモさんから出資していただいていますが、将来的に一般の携帯キャリアの企業さまと連携できる可能性があります。 私たちは、携帯電話だけではなくて(地上、海、空にある移動体を多層的につなげる通信ネットワークシステムである)NTN技術で言われる車や船、飛行機など、あらゆるモビリティがインターネットにつながるような、本当の意味でのユビキタスの時代が宇宙を利活用することで実現できると考えています。地上でアンテナを立てている限り、地球規模でのユビキタスの世界は来ないと思っています。そこを解決するためには、ブレイクスルーするような技術が必要で、それがフォーメーションフライトだと考えています。
他業種からのエンジニア受け入れ 共創の力
――現在、トヨタグループをはじめ計7社から10人のエンジニア人材を受け入れられています。企業間の連携を強化し、ものづくりの考えや手法を積極的に導入されることは、品質管理やコストや競争力の強化に加えて、経営的な観点からみて、どのような相乗効果を期待していますか。 稲川: 宇宙産業は、輸出入が自由にできるかというとそうでもない部分があります。ロケットの技術はいろいろな意味で転用可能といわれる技術ですし、ロケットそのものの輸出入にも、相当の規制があります。国内で、技術やサプライチェーンをある程度完結する必要がある点は、ロケット産業において非常に大事なポイントです。 しかしながら、日本は宇宙産業だけで見ると、マーケットが小さくて、一通り作られるのですが、サプライヤーさんが1社など、やはり絞られる可能性はあります。 日本は例えば、自動車業界は世界で競争力があります。サプライチェーンという言い方をしますが、トヨタのような大手以外に、それを支えるメーカーさんがたくさんある点が日本のアセットとして大きい部分です。そういった方々が宇宙産業においてシナジーを持って、参入してもらうことがものすごく大事だと思っています。 大切なのは他の産業、特に強い産業とどのように連携できるかという点です。当社は、トヨタグループをはじめとしたさまざまな企業と連携できている点が強みです。 一方で宇宙産業には、特殊性もあります。例えば他業界のメーカーがロケットをやりますと言って参入してきたとしても、やはりすぐにはできない世界観もあるわけです。成長産業だからなんとなく飛び込みたいと思っていても、飛び込むためにはどうすればいいのかを考えた時に、先行しているプレーヤーとして私たちの取り組みを見ていただき、宇宙産業で連携や参入ができるところをしっかりとつかんでもらいたいです。 ――オープンイノベーションはよく難しいと言われます。成功のポイントをどう考えますか? 稲川: やはりWin-Winの関係が大事なのではないでしょうか? 宇宙産業は、まだ黎明期だと思っているので、そういう段階ではオープンイノベーションが大事だと思います。守りで隠すみたいなことではなく、いろいろな方とご一緒しながら進めていく、大きくしていくことをまず優先して考えるべきだと思います。