最高裁の裁判官「国民審査」、用紙に「◯」は書かないで 投票前に知っておきたいポイントは
●6名の経歴と実績
では今回、対象となる6人の裁判官たちはどのような経歴、実績があるのでしょうか。 最高裁裁判官となる前の経歴(出身)は、裁判官出身が4名、弁護士出身1名、官庁出身1名でした。また卒業大学は、東京大学が4名、京都大学が2名です。 以下、簡単なプロフィールと、最高裁で関わった主な事件を紹介します。(参照:最高裁HP) <尾島 明> (おじま あきら、1958年(昭和33年)9月1日生。2022年7月5日~最高裁判事) 東京大学法学部卒・裁判官出身。趣味はフルートの演奏や演劇・美術鑑賞。 最高裁で関わった主な事件として、2022年の参院選における一票の格差について「違憲状態」にあると判断しています(2023年10月18日)。 また、男性から性別変更をした女性が、性別変更前に凍結保存した精子で生まれた子の認知を求めることができるかが問題となったケースで、認知ができると判断しました(2024年6月21日)。尾島裁判官は、この裁判で補足意見を付しており、子の福祉を重視する考え方を示しています。 さらに、旧優生保護法により不妊手術を強制された人たちが、国に損害賠償を求めた裁判で、旧優生保護法を違憲と判断しています(2024年7月3日)。 <宮川 美津子> (みやがわ みつこ、1960年(昭和35年)2月13日生。2023年11月6日~最高裁判事) 東京大学法学部卒・弁護士出身。趣味は観劇(特に歌舞伎や文楽等の伝統芸能)、音楽鑑賞(クラシックから米津玄師、藤井風、King Gnu、YOASOBI等まで幅広い)、ゴルフ。 最高裁で関わった主な事件として、旧優生保護法により不妊手術を強制された人たちが、国に損害賠償を求めた裁判で、旧優生保護法を違憲と判断しています(2024年7月3日)。 また、飲酒運転を理由に懲戒免職となった公務員が、退職手当(1620万4488円)を支給されなかったことについて、不支給処分には裁量の逸脱・濫用はない(=結論として不支給は適法)とする多数意見に立っています(2024年6月27日)。 <今崎 幸彦> (いまさき ゆきひこ、1957年(昭和32年)11月10日生。2022年6月24日~最高裁判事、2024年8月16日~最高裁長官) 京都大学法学部卒・裁判官出身。趣味は「無趣味といってよいよう」ですが、あえていえば読書、音楽鑑賞(ジャズ・ロック・クラシック)だそうです。 最高裁で関わった主な事件として、名張毒ぶどう酒事件の10回目の再審請求で、再審を認めない多数意見に立っています(2024年1月29日)。 また、旧優生保護法により不妊手術を強制された人たちが、国に損害賠償を求めた裁判で、旧優生保護法を違憲と判断しています(2024年7月3日)。 さらに、トランスジェンダーのトイレ使用を制限したことを違法と判断しています(2023年7月11日)。 この事件は非常に大きな反響を呼びました。結論としては、裁判官全員一致(今崎裁判官のほか、宇賀克也、林道晴、長嶺安政、渡邉惠理子裁判官の5名による判決)で、トイレ使用の制限を違法と判断しています。 その理由の中で、以下のような具体的な事情を考慮し、本件では、本人が女性用トイレを使用することでトラブルが生じることは以下の理由から、想定しがたいとしています。 ・トランスジェンダー本人が1998年頃から長期にわたり女性ホルモンの投与を受け、男性ホルモン量が同世代の男性の基準値の下限を大きく下回っており、性衝動に基づく性暴力の可能性が低いという医師の診断があったこと ・2010年に行われた説明会の後から、本人は、使用者(経済産業省)側の処遇にしたがって、執務階と2階離れた女性トイレを使用していたが、本人の女性トイレ使用によるトラブルは起こっていないこと ・説明会の際、本人の女性トイレ使用に明確に異を唱える職員はいなかったこと ・トイレ使用についての見直しは、この間検討されてもいないこと 今崎裁判官は、この事件でさらに以下のような趣旨の補足意見を述べています。 ・本人は2008年ころから、私的な時間のすべてを女性として過ごしているが、問題が生じたことはない ・事案ごとの個別具体的な解決が必要であり、一律の解決にはなじまない。同じトイレを使用する他の職員への説明や納得が必要である。 ・本判決は、トイレを含め、不特定または多数の人々の使用が想定される公共施設の使用のあり方について触れるものではない。 最高裁のウェブサイトで判旨が公開されているため、正確な情報が知りたい方はそちらをご覧ください。 <平木 正洋> (ひらき まさひろ、1961年(昭和36年)4月3日生。2024年8月16日~最高裁判事) 東京大学法学部卒・裁判官出身。趣味は演劇やコンサート鑑賞。文楽、歌舞伎、落語、吉本新喜劇、宝塚歌劇、都をどりなど。 最高裁判事となったのが2024年8月16日と最近であるため、最高裁判事として関わった主な事件は見つかりませんでした。 <石兼 公博> (いしかね きみひろ、1958年(昭和33年)1月4日生。2024年4月17日~最高裁判事) 東京大学法学部卒・行政官出身。趣味は読書、音楽、観劇、旅行、食べ歩き。 最高裁判事として関わった主な事件としては、旧優生保護法により不妊手術を強制された人たちが、国に損害賠償を求めた裁判で、旧優生保護法を違憲と判断しています(2024年7月3日)。 最高裁判事となったのが2024年4月17日と割と最近であるため、他の主な事件は見つかりませんでした。 <中村 愼> (なかむら まこと、1961年(昭和36年)9月12日生。2024年9月11日~最高裁判事) 京都大学法学部卒・裁判官出身。オフの過ごし方はウォーキング、水泳。歴史、自然科学の本を読むこと、音楽を聴くことで気分転換するそうです。 最高裁判事となったのが2024年9月11日と最近であるため、最高裁判事として関わった主な事件は見つかりませんでした。