実家にあるMT車を「AT免許」で運転したら違反なの?「無免許」ではないけどダメ? あまり耳にしない「免許条件違反」を元警察官が解説
意外と知らない!?「免許条件違反」ってナニ?
クルマやバイクを運転する際には、その車種に応じた運転免許が必要です。 例えば、実家に帰省した際などで軽トラック(MT車)をAT車限定の免許で運転すると、一体どのような違反に当たるのでしょうか。 【画像】「すげぇぇぇぇ!」これが超激レアな「最強免許」です(22枚)(22枚)
内閣府が公表している「令和6年交通安全白書」によると、2023年末時点の運転免許保有者数は全国で約8186万人でした。 これを運転免許が取得可能な16歳以上の人口に対する割合でみると、全体の約75%もの人が免許を保有している計算となります。 さらにクルマやバイクなどを運転する際は、基本的にその車種に応じた免許を取得する必要があります。 たとえば2025年1月現在、車両総重量が3.5トン未満、最大積載量が2トン未満、乗車定員が10人以下の普通自動車を運転する場合は「普通免許」を取得しなければなりません。 また総排気量が400ccを超えるバイクを運転するなら「大型二輪免許」、125ccを超えて400cc以下のバイクを運転するなら「普通二輪免許」、50ccを超えて125cc以下のバイクなら「普通二輪免許(小型限定)」が必要といったように免許が細かく区分されています。 そのため、自分の免許に対応していない車両を運転すると「無免許運転」に当たり、警察に検挙されれば3年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則を科されます。 では、もし仮にオートマチック車(AT車)限定の普通免許でマニュアル(MT)の普通自動車を運転した場合、これは無免許運転に該当するのでしょうか。 結論から言うと、上記のようなケースは無免許運転ではなく「免許条件違反」という交通違反に当たります。 免許条件違反は、運転免許証の表面にある「免許の条件等」の欄に記載された事項を守らなかった場合に違反が成立し、具体的には次のような事例が挙げられます。 ーーー ●「眼鏡等」の条件が付されているにもかかわらず、眼鏡やコンタクトなどの視力矯正用具を使用しないで車両を運転したケース ●「中型車は中型車(8トン)に限る」との条件に従わず、「車両総重量8トン以上11トン未満」または「最大積載量5トン以上6.5トン未満」の中型自動車を運転したケース ●「普通車はAT車に限る」という条件の普通免許で、MTの普通自動車を運転したケース ーーー 無免許運転はそもそも運転が許可されていない車両を運転した場合に該当するのに対し、免許条件違反は運転が許可されている車両であっても、運転の条件を満たしていない場合に該当するという違いがあります。 このような事情から、免許条件違反の罰則は3か月以下の懲役または5万円以下の罰金と無免許運転に比べて軽い罰則が設けられています。 加えて、この違反は反則金を納付すれば刑事罰に問われない交通反則通告制度(いわゆる青切符の制度)の対象であるため、青切符で検挙された場合は違反点数2点が累積するものの、反則金を支払えば刑事罰を受けることなく違反の手続きが終了します。 とはいえ、免許の条件を守らずに運転すると事故を起こすおそれもあるため十分に注意すべきといえるでしょう。 2024年1月には、福岡県の西日本鉄道が運用するオンデマンドバスの運転手が、本来限定条件のない中型二種免許が必要だったにもかかわらず、8トン未満限定の中型二種免許でバスを運転したという事案も発生しています。 特に業務やプライベートなどで普段乗り慣れていない車両を運転する際には、改めて免許の種別や条件を確認することが大切です。 ※ ※ ※ 免許条件違反についてSNS上では「この違反を知らない人いるの?」といった厳しい意見が聞かれた一方、「たまに眼鏡をかけ忘れて裸眼で運転してしまう」という声も寄せられました。 このようにうっかり違反をしてしまう可能性も考えられることから、自分事として気をつける意識を持つと良いかもしれません。
元警察官はる