賢い社長の節税術…売上が増えても「利益は年800万円以下」に抑える納得の理由【税理士・公認会計士が解説】
利益を抑えるための方法は?
(1)少額減価償却資産の特例 黒「まず紹介するのが少額減価償却資産の特例です。 これは取得価額30万円未満の固定資産であれば、減価償却せずに、一括で購入した年の経費に計上できる制度です。 一般的に、取得価額が10万円以上の固定資産の購入費は数年かけて経費計上するのですが、この特例によって30万円までは一括で経費計上が可能です」 ――なるほど。30万円未満の固定資産にはどのようなものがあるのでしょうか? 黒「たとえばパソコンやコピー機、エアコンなどが該当します。 加えて、少額減価償却資産の特例ではソフトウェアなどの無形減価償却資産にも適用されます。中古資産にも適用されるので、活用できる範囲は広いです」 ――色々なものに適用されるんですね。上手く活用すれば、利益を抑えつつ必要なものを揃えられそうです。 黒「ただし、少額減価償却資産の上限は年間で300万円までと決まっています。 そのため、むやみに固定資産を購入すると上限を超えてしまう恐れがあります。また、少額減価償却資産の特例が適用されるのは購入金額ではなく取得価額が30万円未満の場合です」 ――購入金額と取得価額は何が違うんですか? 黒「取得価額には配送料や取付費用なども含まれます。 なので、もしエアコンを購入したとして、本体の価格が28万円だったとしても、配送料や取付費用で30万円を超えたら少額減価償却資産の特例の適用外になってしまいます」 ――これは勘違いしていると利益を抑えるという目的を果たせなくなる可能性がありますから、注意したいですね。
活用したい積み立て制度
➁経営セーフティ共済 黒「続いて紹介するのは経営セーフティ共済です。 経営セーフティ共済は中小企業倒産防止共済とも呼ばれ、中小企業の連鎖倒産を防ぐために設けられた共済制度です。取引先の倒産で損失を被った場合、積み立てた金額の最大10倍(最高8,000万円)を『無利子・無担保・保証人不要』で借りることができます」 ――連鎖倒産は自社が倒産の対策をしていても避けられないこともありますから、最高8,000万円まで借入できるのはありがたいですね。しかし、これがなぜ節税になるんですか? 黒「実は経営セーフティ共済の掛金は経費として計上することができるんです。そのため、経営セーフティ共済に加入して掛金を支払えば、連鎖倒産のリスクを減らしつつ利益を抑えることができます」 ――なるほど。掛金はいくらですか? 黒「掛金は月額5,000円~20万円の範囲で選択できます。上限積立額は800万円です。年払いも可能なので、最大で240万円の経費を一気に計上することもできます」 ――240万円を一気に経費にできるのはかなり大きいですね。ただ、リスクヘッジなのは理解していますが、やはり借入をする機会がなければ掛金が無駄になる気がしてしまいます。 黒「実は、経営セーフティ共済の掛金は解約時にまとめて返ってくるんです。そのため、実質的に国公認で経費計上したキャッシュを簿外に貯金しておける、というイメージになります」 ――利益を抑えつつ倒産のリスクに備え、簿外資産の形成までできるなら、活用しない手はないですね。 (3)小規模企業共済 黒「次に紹介するのは小規模企業共済です。 経営セーフティ共済と混同されやすい制度ですが、こちらは経営者が自身の収入から退職金を積み立てるための制度となっています」 ――経営者個人が積み立てをする制度なら、会社の経費にはならないんじゃないですか? 黒「その通りです。 しかし、掛金の分を経営者の給与に上乗せすれば、掛金の分を会社の損金に算入できます。小規模企業共済の掛金は経営者の所得から控除されるので、経営者の所得税が増えることもありません。結果的に、掛金を経費のように扱うことができます」 ――なるほど、少々遠回りですが、実質的に経費計上できるわけですね。掛金はいくらなんですか? 黒「掛金は毎月1,000円~7万円の範囲で選択できます。月7万円にすれば、年間で84万円を実質的な経費にすることが可能です。加えて、小規模企業共済に加入すると、事業関連の資金を借入することができます。」 〈貸付けの種類と利率(年利)〉 ●一般貸付け:1.5% ●傷病災害時貸付け:0.9% ●創業転業時・新規事業展開等貸付け:0.9% ●福祉対応貸付け:0.9% ●緊急経営安定貸付け:0.9% ●事業継承貸付け:0.9% ●廃業準備貸付け:0.9% 黒「借り入れは担保・保証人不要で、金利もこのように低めです。審査もそこまで厳しくなく、最短で申し込み即日に借入できます」 ――どのくらい借りることができるんですか? 黒「一般貸付けの場合は最大2,000万円、それ以外の貸付けでは最大1,000万円まで5万円単位で借入することができます。ただし、借入できる金額は、それまでに納めた掛金の7割~9割までとなるため、注意が必要です」 ――経営セーフティ共済と一緒に加入すれば、資金がないときの借入れの選択肢も増えるのでありがたいですね。 黒「ただし、注意点もあります。 [図表2]の通り、小規模企業共済への加入において従業員の数は限られるという点です。 そのため、条件に当てはまる人は、可能な限り早めに加入することをおすすめします」
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