【タイ】前進党の解党決定、幹部は10年の活動禁止
タイの憲法裁判所は7日、最大野党・前進党の解党処分を決定した。幹部11人は政治活動を10年間禁止され、新たな政党立ち上げも禁じられる。 前進党は2023年の総選挙では151議席を獲得して議席数で第1党となったが、政権獲得に至らなかった。不敬罪を定めた刑法112条の改正を総選挙の公約に掲げ、改正運動を進めたことについて、今年1月に憲法裁から違憲だとの判断を下された。これを受け、選挙管理委員会が3月、同党の解党、党幹部の10年間の政治活動禁止を求めて憲法裁に提訴し、憲法裁が4月3日に訴えを受理した。 7日の判決は、8対1の多数決で決定された。判決文では前進党の解散を命じるとともに、党幹部は新しい政党を立ち上げることを10年間禁止するとし、選挙権も10年間停止するとしている。判決で言及されている「党幹部」は「21年3月25日から23年1月31日までの間に在籍していた」とされる。ピター前党首、チャイタワット党首を含む11人を指し、4人の国会議員(ピター氏を入れると5人)が含まれる。地元紙の報道によると、チャイタワット氏は7日の国会審議中に議員資格が失われたことを発表。発表後に前進党の議員は議会で、引き続き結束し、共闘していく姿勢を示した。 ■元幹部「新党が結成される」 今後の前進党の動向については不透明だが、幹部以外の議員を中心に新党の設立を進める可能性が高い。ある関係者は「新未来党の時代も解党を経験しているので、準備は進めていたのではないか」と説明。地元紙では副党首のシリカンヤ氏やデータやシステム開発の問題を担当するナタポン氏が中心となり、新政党が設立される見通しとの報道もあった。 20年に解党処分を受けた前進党の前身、新未来党の創立者の1人であるパンニカ氏は判決の発表に先立って地元メディアに「前進党は新党結成に向けた準備をしていると思う」と発言。「解党されることになれば、さらに強じんな政党として生まれ変わる」との見方を示した。 ■支持者のデモや国際社会の反応は 前進党内部や支持者の間では、「選挙をやれば勝つという手応え」(関係者)が共有されているとみられ、受け皿となる政党を立ち上げ、再び選挙に臨むと予想される。今後は支持者によるデモがどの程度の頻度や規模になるのか、タイ在住者にとっては気になるところだ。憲法裁判所の判決を受け、7日夕方には首都バンコクの中心部で抗議デモの準備をする支持者の姿が見られた。また、選挙で最大の得票数を得た野党の解党処分は世界的にもほとんど例がなく、国際社会・市民社会からの批判がどの程度になるのかも注目される。 憲法裁判所は、14日もセーター首相の解任について判断を発表する予定。セーター氏は4月末に実施した内閣改造で、タクシン元首相の弁護士を務めたピチット氏を首相府相に任命。しかし、これが倫理規定を定めた憲法の条項に抵触したとして、首相失職の妥当性の判断を求めて、上院議員40人が憲法裁判所に訴えた。