なぜ森保監督は賛否起きる久保建英を招集したのか?
久保は6月シリーズで、先発フル出場したコパ・アメリカのチリ、エクアドル両代表戦を含めて4試合でピッチに立った。合計210分間におけるパフォーマンスを介して、就任から1年を迎えた森保監督のなかで描かれていた序列を鮮やかに覆し、ワールドカップ予選へ臨むフル代表のなかで必要不可欠な戦力へ昇華しつつある現状が伝わってくる。 ベンチに入りきれない27人が招集された6月シリーズから一転して、今回の招集メンバーは23人と通常の人数に戻った。3人のゴールキーパーと20人のフィールドプレーヤーが名前を連ねるなかで、後者の中盤には原則としてひとつのポジションに2人ずつの選手、計10人が招集されている。 たとえば久保が主戦場とする中盤の2列目は、左が中島翔哉(FCポルト)と原口元気(ハノーファー96)。右が堂安律(PSVアイントホーフェン)と伊東純也(KRCヘンク)。そして、トップ下が南野拓実(ザルツブルク)と久保、というかたちになるだろう。 もっとも、久保はFC東京では右サイドハーフを主戦場としていただけに、森保監督が描く戦略のなかで選択肢を広げる存在となる。3月シリーズで昨夏のロシアワールドカップ以来の復帰を果たし、故障で離脱したものの6月シリーズにも名前を連ねた、トップ下として十分な実績を残してきた香川真司(レアル・サラゴサ)を現時点で追い抜いたことになる。 ただ、今回の久保の招集に関してはファンの間で賛否が分かれている。というよりも、かなりの割合で「否」の方が多いと言っていい。新天地へ合流したばかりで、確固たる居場所を築きあげるためのアピールが必要な状況でマジョルカを留守にすれば、チーム内における序列が下がりかねない。 加えてスペインから日本、東南アジアのミャンマーをへて再びスペインへ戻る行程は長距離移動、時差、気候の変化などで大きな負担となる。自身を取り巻く環境が激変した6月以降の日々を、フルスロットルで駆け抜けてきた久保に不慮のアクシデントを引き起こしかねない、というのが理由だ。 しかし、今夏に移籍したという状況は、何も久保だけに当てはまるものではない。今回の招集メンバーではGKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台→シントトロイデンVV)、DF安西幸輝(鹿島アントラーズ→ポルティモネンセSC)、DF冨安健洋(シントトロイデンVV→ボローニャFC)、柴崎(ヘタフェCF→デポルティボ・ラ・コルーニャ)、MF遠藤航(シントトロイデンVV→シュツットガルト)、中島(アル・ドゥハイル→FCポルト)、堂安(FCフローニンゲン→アイントホーフェン)も同じだ。