試合に出られない時期、選手はどうあるべきか? 岡崎慎司が実践した、成長するための「自分との向き合い方」
どんなに優れた選手でも、すべての試合に出続けて、誰しもを納得させる最高のプレーをし続けられるわけではない。その舞台が欧州リーグであればなおさらだ。ドイツ、イングランド、スペイン、ベルギー……欧州各国を渡り歩いて14シーズンにわたってプレーを続けた岡崎慎司。彼だって「試合に出られない時期」を経験している。世界が認めた日本人ストライカーは、どのように自分と向き合い、自身を高め続けて、「大器晩成」をなし得たのだろうか。 (インタビュー・構成=中野吉之伴、写真=ムツ・カワモリ/アフロ)
チームのためのプレーと自分のプレーのバランス
先日現役選手としてのラストマッチを終えた元日本代表FW岡崎慎司は、ドイツに来たばかりのシュツットガルト時代に「自分はまだまだ大器晩成だと踏んでる」ということをよく口にしていた。自分への確固たる自信がその言葉に込められているのだと当時は思っていた。もちろんそれもあっただろうが、本人には別の思いもあったのだという。 「だから、というのはありましたね。あまりうまくいっていなかった時期だから、少し無理やりにでも『自分は大器晩成』と言い続けて、『俺はもっとできるんだ、こんなもんじゃない。試合に使ってもらえたらもっとやれる』と自分を奮い立たせるために口にしていたかもしれないですね(笑)」 あれから時は立ち、岡崎はさまざまな記録と記憶に残るプレーで、それぞれの所属クラブで結果を残してきた。マインツでは初年度に日本人5大リーグ最多となるシーズン15点をマーク。翌年も12ゴールを挙げて2年連続2桁得点を達成。レスターではイングランド・プレミアリーグで誰もが驚くセンセーショナルな優勝に貢献。ウエスカとともにスペインリーグ1部昇格。他にも数多くの記録を打ち立てている。 シュツットガルト時代に、「監督にはシンプルにプレーして、つないで、クロスをするというプレーを求められて、自分はそれを体現した。でもそれだけじゃダメ。やっぱりどっかで目立たないと」というコメントを残している。とはいえエゴプレーばかりだと、そもそも出場機会を得ることもできない。 チームのためのプレーと自分のプレーのバランスにおいて、どのように折り合いをつけていたのだろう? 「周りが見えないくらいエゴを出してやっちゃうと後で反省はする。でもそれってやってなかったら反省には至らないんですよね。エゴを出してめちゃくちゃなミスや失敗をすることもあるんですけど、その後で落ち着きと反省を手にできる。例えば『あ、やっぱりこういうふうに焦ってやっちゃうと、こういうふうになるんだ』って。メンタルが追いついてくるみたいな感じ。まずは目の前が見えないぐらい必死にゴールを取りにいってみないと、そこで冷静になれないというか、気づけなかったこともあったと思うんです。 自分よりもゴールするチャンスがありそうな選手にパスせずシュートを打ったときに、多分こっちのヨーロッパの選手だったらなんとも思わないと思うんですよ。自分で決断してシュートしたんだから関係ねぇみたいな。でも僕は、パスしといたほうがよかったかなみたいなのがちょっと残っちゃう。それって自分自身めちゃくちゃ損だよなって気づいたんです。だって逆にパスをしても、その選手がシュートを外したら、自分にもなんの結果も残らない。アシストもつかないし、シュートも打てない。それが一番最悪だなって。 つまり、すべての選択は自分の責任でしなきゃいけないということ。結局どっちを取っても正解であったり不正解だったりする。そうやって自分で一つ一つのプレーに常に責任を取るという気持ちで取り組むことで、プレーを改善してきたって感じですね」