日銀・黒田総裁会見1月21日(全文3完)デフレが長引くと容易に脱却できない
日銀の黒田東彦総裁は、金融政策決定会合後の21日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀・黒田総裁が決定会合後に定例会見(2020年1月21日)」に対応しております。 【動画】日銀・黒田総裁が決定会合後に定例会見(2020年1月21日) ◇ ◇
ジャパニフィケーションの議論をどう見ているのか
ロイター:ロイター通信の木原ですが、最近先進国の間で低インフレ、低成長、低金利という状況が続く中で、欧米中心にジャパニフィケーションという議論が依然続いています。あと政策の枠組みやインフレ目標の在り方についても議論が活発になってきているんですが、日本が長い間経験してきた低インフレ、低成長という状況に、こうした議論を担っていることについて、日銀の総裁としてどういうふうにご覧になっているのか。また、例えばグローバルスタンダードが今後インフレ目標のレンジ化になっていく場合は、日銀の政策判断、インフレ目標達成への政策スタンスにどういう影響を及ぼしうるのか、その辺りをお願いします。 黒田:確かに日本は1990年代にバブルが崩壊して、90年代の後半から低インフレ、低成長、そして特に2000年代に入って低金利ということで、そういった状況が続いてきたわけですが、そういったことを踏まえて、デフレからの脱却を目指して、2013年の1月に2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するという決定を日銀として行い、そして4月に量的・質的金融緩和を導入して、大規模な金融緩和を行ってきたわけです。 そうした下で、デフレではない状況になっていますし、経済成長も戻ってきてるということであります。ただ、まだ2%の物価安定目標は達成されていないという段階で、金融政策としては低金利によって経済の成長、拡大を刺激するという観点から低い金利を維持しているということであります。
1つの理由はデフレマインド
日本の経験からいえるということは、やはり低インフレとかデフレが長引くと、そこから抜け出すのがなかなか容易ではないと。よくデフレマインドっていわれますけども、やはり賃金、物価が上がりにくいということを前提にした慣行が、家計とか企業に残っているということが、わが国の場合、なかなか2%へ達していないということの1つの理由だと思いますので、そういうことから言うと、ほかの国でも低インフレ、デフレが続くと、なかなかそこからの脱却は難しくなるということですので、そうならないように機動的に財政・金融政策を運営するということが重要だということだと思います。 また、そもそもわが国の場合にそういうことに陥ったことの1つの大きな理由が、やはりバブルが巨大なものになって、それが崩壊して、その後の金融危機によって経済の落ち込みとか、デフレがもたらされたということですので、やはり金融が行き過ぎた振幅をもたらすということは、やはり経済の発展性にも好ましくないということですので、この点は日銀はこの教訓を踏まえて、金融機関のモニタリングとか、あるいは金融システムレポートで資産市場とか金融機関の行動をかなりきめ細かく把握して、分析をして、金融政策の運営の場合にも、金融面での不均衡が発生するリスクがないかということを常に点検しておりますので、その点も諸外国もそういう私どもの教訓というのは、しっかり理解しておられるのではないかというふうに思っています。 最後に、低インフレ、低成長というときに、単に金融政策、あるいは財政政策も需要を付けろというだけでなくて、やはり成長力というか、潜在成長率を引き上げると。それによって自然利子率も引き上げるということが、やはり長期的に見てこういった状況を回避して、こういった状況から脱却するための1つの重要なファクターだと思いますので、その点も、ジャパニフィケーションと称して何を議論されているかというのは、いろんなことがあると思いますけども、今言った3点はかなり理解されているのではないかということです。