万博まで半年 地方へ訪日客呼び込め 都会の観光公害解消にも貢献 課題は交通の脆弱さ
来年4月の2025年大阪・関西万博開幕まで半年を切り、訪日客増加への期待も上がる中、人の流れを地方に呼び込み、地域活性化につなげる取り組みが関西で広がっている。都市中心部に訪日客が集中するオーバーツーリズム(観光公害)の問題を解決する思惑もある。ただ脆弱(ぜいじゃく)な交通インフラなど課題も少なくなく、期待される効果を生み出すことは容易ではない。 【写真】ガス爆発が起きた万博会場で建設中のトイレ。コンクリートの床などが破損した 「日本のお茶は世界一だが、味わうために行くべき場所は東京ではない。京都府南山城村こそが最高だ」 滋賀や三重との県境に近い南山城村の道の駅に隣接するホテルで、フランスから来た2人組の男性は村で採れる茶の魅力をとめどなく語った。 南山城村は長年、人口減少で苦しんでいたが、平成27年に村の100%出資で株式会社「南山城」を設立。同社が29年4月に道の駅をつくり、令和3年3月には、積水ハウスが展開する米マリオット系のホテルを誘致した。 海外でも知られるホテルを誘致したことで、旅行検索サイトを通じて訪れる外国人が増加。南山城の森本健次社長は「都心とは違う魅力を感じてもらえる人たちを呼び込みたい」と語る。 大阪・関西万博と絡めて訪日客を呼び込もうと動く地域もある。 兵庫県新温泉町では、豊かな自然を活用して観光客に地域の魅力を知ってもらう事業が5年、万博来場者らの誘致を促進する県の観光支援事業に認定された。PR活動などで支援を受けられる。 訪日客の呼び込みを通じた地方振興は、地方の政府機関も取り組みを強化している。 国土交通省近畿運輸局は、万博に向け関西への観光客増を目指す「関西観光アクションプラン」を今年8月に改定した。同プランは近畿地方整備局などとつくったものだ。 約300の関西各地の観光関連事業に対し、実施のための補助金の拠出やPR面での支援などを盛り込んでいる。国内外からの万博来場者に、各地方へ足を運んでもらえるよう情報提供などを進める。 取り組みの背景には、訪日客が訪れる地域に著しい偏りがある実態もある。近畿運輸局によると、昨年7~9月の訪日客の43・8%が大阪府、34・1%が京都府を訪れたが、奈良県は10・1%、和歌山県は1・5%にとどまった。