「五輪・コロナ」に終始しない論戦を “国政の先行指標”としての都議選
【争点1】「老いる東京」問題
経済成長も終焉。夏の五輪・パラリンピック終了後は「イベント都政」とは決別し、大都市経営に関わる問題に大きなエネルギーを注ぐ必要がある。ここでは「老いる東京」と「東京一極集中」という2つのポイントに絞って問題提起してみたい。 まずは「老いる東京」問題。あと4年すると“団塊の世代”の全ての人が75歳を超え、65歳以上が4人に1人となる。医療、介護、年金等の社会保障が大変になる。財政面はもちろんだが、介護、医療など施設面でもそうだ。人口が集中する東京では、高齢者層の絶対数が桁違いに大きい。しかも木造密集地帯を中心に独居老人が4割近くおり、身寄りのないお年寄りが街に溢れ出ないか。 インフラも老いる。半世紀前の東京五輪前後に集中的に整備した道路、港湾、橋、上下水道、歩道橋、学校、公共施設、地下鉄、鉄道、首都高などのインフラが一斉に寿命(耐用年数50年)を迎える。再整備にせよ、廃棄にせよ、膨大なカネと時間が掛かる。この先東京はどんな都市になるのか。この「老いる東京」問題の解決は、今後の都政のメインテーマとなってくる。 「老いる東京」への対応には、人も予算もかかる。都政には強い行革の断行により、ムダを排除し財源を生み出すことが求められる。事務事業、組織体制、人員配置、都と区市町村の関係見直しなど、都政の大改革に力を注ぐ。都議選ではこのテーマで本格的に論争されることを期待する。
【争点2】「東京一極集中」問題
コロナ禍で傷んだ東京をどう復活させるか。確かに東京はこれまで日本の首都、また経済の中心として国を牽引する“機関車”の役割を果たしてきた。しかし、在宅勤務やテレビ会議などを経験し、毎日満員電車で都心に通う必要性を感じない人々も増えている。これまでの東京一極集中のままの復活なのか、違う形の「新たな東京」としての復活なのかを考える良い機会だ。 小池都政はシンガポールなどに対抗し金融都市づくりが東京復活のテコになるというが、旧来のままの東京復活を企図している感が強い。東京をどうする。戦後70年余、都政は東京の「巨大化」を肯定してきた。だが今後、巨大化を否定する視点も必要ではないか。量より質を高める東京政策の構築だ。その方法にはいろいろあろう。 例えば「東京2割減反」する考えはどうか。人も企業も大学も2割減らす。その分を地方に回す。その誘導策を本気でやることだ。超肥満となり身動きのとれなくなったマンモスは死ぬ。今の東京はそう見える。 体重を落としこれを筋肉質でスリムな質の高い東京に変えていく構造改革に挑む時ではないか。それには新幹線、高速道、航空便を実質上タダにしたらどうか。日本は米カリフォルニア州1州ほどの面積しかない小さな国。幸いその中は、3大高速網がよく整備され、端から端まで行くのにそう遠くない、時間もそうかからない。だがカネがかかる。この移動コスト(運賃)がバリアになって人も企業も事務所も動かない。ここを大胆に直したらどうか。 新幹線料金、高速道料金を国や都の負担で普通運賃並みにする。その公費負担に都も再開発費用の一部を拠出したらどうか。土地が狭く過密で地価が高い東京の再開発にカネをかけるより、広域分散にそのカネを振り向けた方が東京のためにも、都民のためにもなる。本社、本庁は東京にあっても、サテライトオフィスが地方の中核都市に集積すると、若い人たちは万遍なく地方に移り住むようになる。東京圏は仙台、新潟、名古屋まで広がり、若い人に老親も付いていく。こうして東京一極集中は自然に緩和する。水は低きに流れる。
「右肩下がり時代」の構想を
明治維新から150年間、日本はひたすらヒトは増え、所得は増え、税収は増え、成長の続く「右肩上がり社会」だった。人口は1世紀の間に約4倍に膨れた。東京は9倍にもなった。だが、この先はその逆の動き、坂を下るように減り始め、年を追う毎に厳しい下り坂となっていく。右肩下がり社会をイメージしての東京構想がいる。 こうした大きなターニングポイントに立つ中での都議選だ。“首都の政治が変われば日本の政治が変わる”国政の先行指標となる闊達な都議選を期待したい。