なぜ軽自動車は「64馬力」が上限? エンジン出力向上&技術力も上がったのに… 「軽の最大出力」現状維持する理由とは
軽自動車が「64馬力止まり」な理由は?
クルマの出力は、ベーシックなモデルでは100馬力程度の必要十分なものから、500馬力以上のハイパワー車まで幅広く存在します。 しかし軽自動車は、エンジンの性能や効率が大幅に向上した現在でも、最高出力は最大64馬力のまま。一体なぜなのでしょうか。 【画像】超カッコイイ! これが「85馬力の超スポーティ軽自動車」です 画像で見る(19枚)
軽自動車は日本特有の規格で、1949年に新設されました。 当初は排気量が360ccでしたが、1975年には550ccに、そして1990年には660ccまで拡大。 そして規制緩和に伴い車両のサイズも拡大し、現在では全長3.4m以下×全幅1.48m以下×全高2m以下に定められています。 対して出力(馬力)の面では、特に法律上の規制はなく、排気量やボディサイズを満たしていれば何馬力に設定しても問題ないと言えます。 しかし、ほぼすべての軽自動車で64馬力を超えるものは存在しません。 上限が64馬力に制限されているのは、実はメーカーによる自主規制なのです。 この背景には、1980年代の交通事故による死者の増加が関係していると言います。 当時はターボやスーパーチャージャーなどの過給器の搭載や、ツインカムの採用などクルマの性能向上が著しく、各メーカー間の高馬力競争が激化していました。 軽自動車においてもハイパワーなモデルが数多く登場。こうしたことから、死亡事故の増加につながりました。 そのため、当時の運輸省は、行き過ぎたパワー競争が交通違反や交通事故の増加を招く恐れがあるとし、日本自動車工業会に出力の制限を申し入れ、自動車メーカー各社もこれに従い、自主規制をはじめたのです。 当時は軽自動車だけでなく乗用車においても馬力の自主規制がおかれ、1989年に登場した日産「フェアレディZ」(Z32型)が国産車最高となる280馬力を達成。これに続いて乗用車は上限が280馬力に制限されました。 また、1987年に発売されたスズキ「アルトワークス」(初代)では、軽自動車最高の64馬力を達成。これが軽自動車の基準となり、64馬力規制が行われることになったのです。 なお、乗用車の280馬力規制については2004年に撤廃され、2004年に登場したホンダ「レジェンド」(4代目)で300馬力の大台を達成しています。 乗用車の規制撤廃については、海外メーカーに対する日本車の競争力強化や、安全性能向上により交通事故死者が減少したことなどが理由とされています。