金原ひとみ×ゆっきゅん対談。新しい出会いを受け入れていくこと「中年になると、だんだん自分の世界が定まってくる」
世界がひらけるときや、感動的な出来事には抗えない
ゆっきゅん:私もそう思います。自覚が全然なくても、平木に出会ったとき、最初からどこか面白がる目線や観察するような視点が浜野にはありましたよね。 あと、世界がひらけるときとか、感動的な出来事には抗えないんですよね。ライブに行ったときのシーンを見てそう思いました。何も起こらないように、無感動でいることを保つために、あえていろんなことを遠ざけて自分の世界をつくっている。ライブに行っても何も感じない人だったわけじゃなくて、ただそういう場所に行かないようにしていただけなんだと思いました。 金原:行ったら行ったで、めっちゃ心が動き出してしまう。 ゆっきゅん:そう。平木に誘われて、ライブに初めて行ったときのシーンにめっちゃ感動しました。 もう何が起きたかわからなかったみたいな、ライブハウスに行ったときの感覚が描かれていて、あれは絶対に音楽が好きな人しか書けないと思います。爆音のど真ん中、渦中にいた経験がないと書けない。 金原:嬉しい。ゆっきゅんは、平木側の人間ですよね。 ゆっきゅん:いや、でもテラスで裸にはならない(笑)。あとスケボーもやらない(笑)。でも、柚木(麻子)さんにスケボーやろうよって言われたら行くなぁ。 金原:この人とだったら乗り越えられるシチュエーションってありますよね。 「一体何が起こったのだろう。私は自分が何に巻き込まれたのか、いや、自分が何に飛び込んだのかよく分からないまま、コインロッカーの中からバッグを取り出していた。目が大きく見開いたまま閉じられない。」 「私は民で、息の根を止められた。そう思った。ボーカルは最初から最後までほらこいよとイキリ狂ったジャンキーのような煽りと歌唱とモッシュの指導しかせず、一言も普通の言葉は吐かなかった。」 ゆっきゅん:すごく嬉しかったのが、いまだから出会えた、みたいなことがこの物語に描かれていたことで。ここ1年間くらい、私もすごくそう思っていたんです。 結局人と人が出会うときって……。変な人とかヤバい人、自分に衝撃を与えるような人は、ずっといて、出会おうと思えば出会えるんだけど、「出会える自分」になっていないと出会えないと思うんです。 金原:そうですよね。その機会を延ばしてきたというか。熟して、熟し続けてきて、ようやくいま出会えた、みたいな瞬間って、きっとあると思います。 私も、いま自分のまわりには「5年前だったら仲良くなっていなかったかも」みたいな人が結構たくさんいて。それこそ、柚木(麻子)さんとかね(笑)。柚木さんとゆっきゅんさんと一緒に行った、ある授賞式が、本当にすごく楽しかった。本当によかった。パーティーを楽しめる人間になれた。 ゆっきゅん:私はずっと柚木さんから聞いていたんですよ。「同世代の小説家は誰もパーティーが好きじゃない」って。 金原:「誰もパーティーが好きじゃない」って、いいね。 ゆっきゅん:いいですよね。私、スマホにメモしてあります(笑)。