エイガールズが地元和歌山でイベント その背景にある「産地の危機」と「その先の希望」
とても素晴らしい工場だが、単体で見せても、外部の人にはわからないかもしれない。イベントで人を呼び、ファクトリーツアーと組み合わせることで、こうした工場の魅力を発信し、産地全体をブランディングしていく。
WWD:なぜ産地全体のブランディングを?イベント実施の背景には何があるのか?
山下智広社長(以下、山下智広):エイガールズは20年前にプルミエール・ヴィジョン(以下、PV)の出展をきっかけに、海外市場、特に欧州や米国のメゾンブランドの販路を開拓し、それなりに実績も積んできた。その一方で、この20年を取ってみても、産地の疲弊は激しい。当社は大半をこの和歌山産地でモノ作りしており、かなりリアルに以前のようなモノ作りがどんどんできなくなっている。
WWD:具体的には?
山下智広:商品企画よりも生産面の制約が大きい。PVに出展してから10年くらいは、小ロットで小回りがきき、かつスピーディーに対応できることが強みだった。だが、以前は数週間の納期で対応できたものが、数ヵ月という状況が常態化している。吊り編み機やビンテージな丸胴など、小規模な設備や人員でこなせる技術はまだなんとか維持できているが、染色や仕上げなど、大掛かりな設備や人員の必要な工程が厳しい。こうした状況は、小規模な丸編工場にもボディーブローのように効いており、あるタイミングを境に一気に廃業や倒産につながる可能性が高い。
WWD:課題は?
山下装子:最も大きいのは、人手不足だ。働き手が確保できず、経営側は後継者にも悩んでいる。
山下智広:これは、自分たちも含めて地方の中小企業の本当に大きな経営課題だ。処方箋で言えば教科書的に言えば「働く環境を整備・改善」し、「賃金を上げる」ことになるだろう。前者は経営者の努力や意識次第で、なんとかなる。これは例えば組合や「和歌山ニットプロジェクト」でコラボレーションした企業とは、同じ地元だし、情報交換したり、お互いに刺激し合いながらどんどん改善している実感がある。