自民、立民への働きかけで国民に揺さぶり…補正予算案賛成方針引き出す
2024年度補正予算案を巡り、自民党は、立憲民主党への働きかけを強めることで、国民民主党を揺さぶり、賛成方針を引き出した。立民の主張する予算案の修正要求も一部受け入れ、12日の予算案の採決につなげた。自民は今後も複数の野党との交渉を並行して進め、少数与党としての国会運営を少しでも優位に運べる環境を整えたい考えだ。 【写真】スーツにアイロンがけする国民・玉木代表
「国会として一定の責任を果たせた」
自民党の森山幹事長は11日、公明、国民民主両党幹事長と「年収103万円の壁」見直しなどに関する合意文書を交わした後、ほっとした様子で記者団にこう語った。合意を踏まえ、国民民主が補正予算案の採決で賛成に回り、成立が確実となったためだ。
合意文書では、国民民主の看板政策である「年収103万円の壁」の見直しについて「178万円を目指し」、「来年から」との文言を受け入れた。税収減を懸念する自民内からの反発も予想されたが、補正予算の成立を優先した。自民の宮沢洋一税制調査会長は記者団に「(合意は)釈然としない」と述べ、不快感を隠さなかった。
衆院選で少数与党に転落した自民、公明は、一部の野党の協力がなければ経済対策の財源の裏付けとなる補正予算案を成立させられない。特に、政策が近い国民民主の協力は25年度当初予算案の審議を見据えても欠かせず、自民党は「譲歩してでも国民民主との協力関係を維持するしかない」(幹部)との判断に傾いた。
もっとも、自民内には「カードが国民民主1枚だけでは押し込まれるばかりだ」(ベテラン)との危機感も広がっていた。自民は国民民主との協議と並行して、立民との交渉も進めた。10日には、立民が補正予算案に賛成に回る可能性があるとの観測が飛び、国民民主内に「立民に賛成されたら埋没する」(幹部)と動揺が走った。
自民とすれば、衆院予算委員長ポストを握る立民が抵抗すれば、自民が目指す12日の衆院通過に向けた採決に入れない可能性もあり、立民の顔を立てることも欠かせなかった。修正案の提出という異例の対応で、立民を引き寄せた。