日産パルサー1400TS-G(昭和53/1978年5月発売・HN10型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト099】
ヨーロッパ車の雰囲気を持たせたFFカー、ライトウエイトスポーツとして高い評価を得る
この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第99回目は、ヨーロッパ車をターゲットに磨きをかけられたFFライトウエイトスポーツ、日産パルサー1400TS-Gの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より) 【写真はこちら】若者層に人気のあったチェリーの後継がパルサーだ。欧州車を多分に意識したハッチバックスタイルはスマートで、ファンの期待を裏切らないものだった。(全7枚)
昭和45(1970)年に登場した日産チェリーは、FFスポーティカーとして人気を博したが、昭和53(1978)年には車名をパルサーに変えてフルモデルチェンジする。 キャッチフレーズは「パルサー・ヨーロッパ」。これは「ヨーロッパの先駆車を凌駕する高い完成度を持つ日産の自信作」という強い意気込みを表現したものだ。
スタイリングも欧州車のイメージがあった。バックウインドウの傾斜を強くして軽快感を高めた4ドアセダンだが、軽量化と高剛性の確保のためハッチバック2ボックススタイルを基本とした。重心の低い台形のフォルムと、シャープなウエッジラインを採用して、若々しくダイナミックなイメージを追求したものとなっている。 バンパーレベルから開くリッドやトランクルームランプ(1.4L車)など、3BOXセダンと変わらない使い勝手の良さを謳っている。 FFということからエンジンは横置きとなる。これを生かして限られた車体寸法の中でコンパクトにまとめ、室内長の確保に努めているのも特徴だ。室内幅は当時の同クラス車としては最大とし、上級車に匹敵する居住空間を確保していた。 2ボックススタイルを採用したことで、後席のヘッドルームを広くとるとともに、後席にタイヤハウスが突出しないように配慮するなどのスペースを確保している。もちろんFFであるために、フロア中央部のトンネルを小さくできたことから、前後席とも足元にゆったりしたスペースを生むことができている。
エンジンは直4OHVの傑作と言われたA型で、1.2Lと1.4Lが設定され、上級の1400TS及びTS-Gには総排気量1397ccに9.0の圧縮比と2バレルキャブレター単装で80psを発生するA14S型が搭載されている。 TS(ツーリングスポーツ)とはいえ、従来のスポーティグレードでは常套手段だったSUツインキャブ仕様などスポーツエンジンの設定がなかったのは、日産の排出ガス対策であるNAPSで昭和53年排出ガス規制に対応したためだ。 同レベルの出力で他車と走りの差別化を図るにはボディを軽量化してエンジンの負担を減らすしかない。そこでパルサーは最も重い1400TS-GでもMT車の車重を840kgに抑え、パワーウエイトレシオは10.5kg/psを達成している。