「脂肪肝を軽く見てはいけない」肝臓外科医が警鐘を鳴らす内臓脂肪より厄介な“肝臓にたまる脂肪”
肝臓は脂肪がたまってはいけない場所
まず、押さえておいてほしいのは「肝臓は、本来脂肪がたまってはいけない場所だ」ということです。 肝臓の脂肪のように、体内のたまってはいけないところに蓄積する脂肪は「異所性脂肪」と呼ばれています。 そもそも、体脂肪には「皮下脂肪」「内臓脂肪」「異所性脂肪」の3つがあります。 通常、皮下脂肪がいっぱいになると内臓脂肪がたまるようになり、皮下脂肪も内臓脂肪もパンパンになって入りきらなくなると、そこからあふれ出した脂肪が肝臓をはじめとした「異所」にたまっていくようになるわけです。 皮下脂肪は、皮膚のすぐ下につく脂肪であり、ここにたまる脂肪はたいして害をもたらしません。一方、内臓脂肪は、腸間膜をはじめとした内臓にべったりと蓄積する脂肪です。内臓脂肪がたまるとおなかがぽっこりとせり出してくるようになり、高血圧、高血糖、脂質異常症、動脈硬化といったメタボ系疾患を促進させることが知られています。 きっと、みなさんの中にも、「内臓脂肪が多いとヤバイことになる」と日々気にして警戒をしている方が多いのではないでしょうか。
脂肪が毒性を持ちダメージを与える
ただ、その内臓脂肪よりもはるかにヤバイのが異所性脂肪なのです。肝臓にたまる異所性脂肪は、内臓脂肪よりもさらに厄介な問題を引き起こします。 肝臓に脂肪が過剰にたまってくると、その脂肪が毒性を持つようになり、炎症細胞を呼び集めて肝細胞に障害やダメージをもたらすようになっていきます。これにより肝細胞破壊が進み、肝機能がどんどん低下していってしまうわけです。 とにかく、「肝臓に脂肪がたまる」ということは、基本的にあってはならないことであり、もうそれだけで異常事態だと考えるべき。脂肪肝という異常事態を見過ごしたまま進行させてしまうと、肝臓の機能がじわじわと弱り、それとともに日々を健康に生きる力もじわじわと弱っていってしまうのです。 だから、わたしたちは、決して脂肪肝という問題を軽く見てはいけません。「なーんだ、脂肪肝か…これくらい平気だよな」なんていう軽々しい態度をとるのは、自分から病気や不調を招き寄せて、健康な人生をみすみす放棄しているようなものだと思ったほうがいいでしょう。 尾形哲 長野県・佐久市立国保浅間総合病院 外科部長(肝胆膵)・救急医療部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。最新刊『甘い飲み物が肝臓を殺す』のほか『肝臓こそすべて』『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』など著書多数。SNSでも肝臓から脂肪を落とす術を積極的に発信し、大きな反響を呼んでいる。
尾形哲