BMSG POSSE インタビュー「トウキョウのアイデンティティを音楽で遊びながら提示したい」
BMSGに所属する5人のソロアーティスト、SKY-HI、Novel Core、Aile The Shota、edhiii boi、REIKOによるBMSG POSSEが初のオムニバスアルバム『TYOISM Vol.1』を12月11日デジタルリリース。彼らが体現する「東京を起点とする独自のグローバリズム=TYOISM(トウキョウイズム)」とは? 賑やかなインタビューは、BMSG POSSEの掲げる「本気で遊ぶこと」から、孤独を抱える現代人、「TYOISM」は精神的な地元(フッド)になり得るという話に展開した。
注目のソロアーティスト5人が、音楽を本気で遊ぶ
──2024年から本格始動したBMSG POSSEですが、構想自体はBMSG設立当初から考えていたんですか。 SKY-HI「こういう存在があったら面白いだろうなという構想は、起業当初からありました。『ODD BRICK FESTIVAL 2022』に、自分と(Novel)Core、(Aile The)Shota、edhiii(boi)の4人で出演したあたりから、自分の中にあったPOSSEのヴィジョンが、明確になって。戦略的にプロジェクト化したというより、赤ちゃんが1歳過ぎると勝手に歩き出すみたいな感覚です」 ──そこに2023年にソロデビューしたREIKOさんが加わり、現在メンバーは5人です。この5人をベースとして今後どんどん広がりを見せていったり? SKY-HI「BMSG POSSEは、もちろんこの5人のことを指す言葉ではあるけれど、我々は象徴なだけであって、ひとつの概念です。そもそもみんなソロアーティストとして、『やりたいこと』と『やるべきこと』があるんですね。『やるべきこと』に対してはみんな責任を負える人だし、『やりたいこと』を追求しながら高い意志をもってアーティストとしての活動を邁進しているけれど、それだと『やったほうがいいこと』が抜けがちになる。それができる場所としてBMSG POSSEが存在しています。それに、音楽を仕事にしてしまうと、音楽で遊ぶことは難しくなるけれど、“遊ぶ”感覚は絶対なくしちゃいけない。こういう音楽の遊びがしたいなと思ったときに、気軽に取り組むことができるのがBMSG POSSEだし、今後ますますBMSGに所属する人やそうでない人とも、一緒に遊べる存在になっていくと思います」 ──今回の『TYOISM Vol.1』は、ジャンル的にヒップホップにこだわらない感じがしますが。 SKY-HI「もはや『ヒップホップにこだわらず』っていう言葉すらもこだわりたくない気持ちもあって。それは、タイトルの『TYOISM』にあるように、東京という街そのものだと思うんだけど、東京は多様なバックグラウンド、カルチャー、人種が集まっています。長い歴史がありながら、表層ではあらゆるところから影響をうけたものがどんどんミックスされていて、そこから新しくて面白いものが生まれている。ジャンルにしても、ヒップホップへの疑いようがないくらいの愛情とリスペクト、知識をひとつの担保にできるのであれば、我々がやるべきことは打算的なジャンル感じゃない。でも、それが音楽のあるべき形だと思うんです。元々は中学生や小学生の頃に、純粋に楽しくて始めたことだし。繰り返しますが前提としてお借りするカルチャーへのナレッジやリスペクトは当然必要不可欠です。ただ同時に、小学生のときに“ヒップホップ原理主義”なんて考えたりしないじゃない。その感覚も忘れてはいけない気がするんですよ」 ──5人の年齢には幅がありますが、若手であるedhiiiさんやREIKOさんもちゃんと遊べていますか。 edhiii boi「あの……ずっと言おうと思ったけど、迷って言わなかったことがあって」 SKY-HI「お、なんだ。言ってやれ言ってやれ」 edhiii boi「ShotaくんとREIKO、日髙さんに最初に会ったのは『THE FIRST』のオーディションだったんですけど、Coreくんとは『118』のレコーディングで初めて会って、プライベートの交流があまりなかったんですよ。BE:FIRSTも年齢は上だったりするけれど、オーディションで仲良くなったからタメ口で話すんです。JUNONにもSHUNTOにも、SOTAもそうだし」 Aile The Shota「最初はびっくりしたけどね」 SKY-HI「edhiiiは俺にも普通にタメ語だから」 edhiii boi「でも、Coreくんに対してはずっと敬語だったんです。距離を感じていて。POSSEに入ってからちょっとずつ日常の話をして、フラットに話せるようになったのが自分にとってめちゃくちゃ嬉しいことでした」 Novel Core「俺も嬉しいよ(笑)」 edhiii boi「後悔したんですよ。最初からみんなにちゃんと敬語を使っておけばよかったなって」 Aile The Shota「BMSG POSSEは、edhiii boiの育成プログラムでもあるんで(笑)」 Novel Core「更生プログラムだよ(笑)」 ──そういえば、edhiiiさんは「BMSG POSSE:”This Is Who We Are”」で、先輩の言葉の選び方や並べ方を新しく感じたと言ってましたよね。 edhiii boi「『Girlfriend』で日髙さんやCoreくんのバースを聞いたとき、新しさを感じたんです。ビートも絶対これから来るやつだと思ったんですけど、そうじゃなくて、時代が一周してたという。世代が違うから、聴いてきた音楽も違うし、俺は新しいと感じたものも、みんなからしたらよく知ってるものかもしれない」 Aile The Shota「edhiiiと僕は9歳離れてるんですけど、edhiiiは小学校からヒップホップを聴いていて、僕は18歳からなので、ヒップホップを聴いている歴は同じくらいなんですよね。そういういびつさだったり、それぞれの音楽的なルーツの混ざり方も、BMSG POSSEらしいところでもあり、東京らしさに繋がっているんだ思います」 ──REIKOさんは? REIKO「僕は昨年の10月にメジャーデビューをして、今年からBMSG POSSEとしての本格的な稼働が始まったんですけど、クリエーションをぶつけ合うプロセスの中で、自分を知ることが何度もありました。ステージ上のパフォーマンスでも、この人はこういうスタンスで歌っているから、じゃあ自分は?と考えることを繰り返しているうちに、『アーティスト REIKO』の色が見つかったような気がします。すっごく楽しいんですよ。プロフェッショナルなミュージシャンとして、4人が僕のことをリスペクトしてくれて、僕が4人をリスペクトしてる。この関係性に加えて、同じ旗を掲げるクルーだから心を許すことができる。自分らしく遊ぶことができています」 SKY-HI「音楽制作は自分が裸になるような作業だから、集団を通して自分のことがよく見えるんです。POSSEの制作をしていると、最初に話したソロで『やりたいこと』と『やるべきこと』が、むしろはっきりと浮き彫りになってくるし、やっぱりみんな上手いから、もっと自分を磨かなきゃなとも思うんですよね。POSSEが自分の鏡みたいなところありますね」 ──BMSG POSSEとしては、今年、ROCK IN JAPAN FESTIVALや、SUMMER SONICなど大型フェスにも出演しましたよね。 REIKO「すごく勉強になりました。僕らのことを知らない人にも、『今のシンガーの声って誰?』と思ってもらえるような表現を学んだり。僕らはいつも構成を決めずにステージに立つんですけど、今、誰がどこにいて何をやっているのかをお互いに見ながら、パフォーマンスするんです。トレーニー時代は立ち位置が決まっていたので、最初は戸惑いました。実は、POSSEの中でどうやったら自分は輝けるのか悩んだこともあったんですけど、それは場数を踏みながら見つけていくものだったなって。今年たくさん学んだので、来年、POSSEも含め、自分がどこまで成長できるるかすごく楽しみです」 SKY-HI「ステージはコミュニケーションのキャッチボールだから、ソロのときには生まれないアイデアでパフォーマンスできたりするよね」 Aile The Shota「ソロで活動しているときは、ステージ上で自分が歌ってない時間がないんだけど、POSSEでは、逆に楽しんでパフォーマンスできたりもするし」 edhiii boi「ソロでは曲の最後に、MCで何を話そうかと考えてたりするけど、POSSEだったらきっと誰か喋ってくれるだろうって」 Novel Core「違う違う。そういう話をしてるんじゃないよ(笑)」 SKY-HI「次からMCの最初と終わりはedhiiiが担当ね」 edhiii boi「えーーーーーーー」 Novel Core「今、初めてPOSSEにルールができました(笑)」 ──話を伺いながら、この5人の役割が見えてきたような気がします。 SKY-HI「edhiiiとCoreは、トムとジェリーだって言われてます」 Novel Core「実は仲良しっていう」 Aile The Shota「ステージの話に戻ると、Coreはバトルシーンで培った実力とカルチャーサイドからのリスペクトがあるし、Coreがラップすると場をロックするのをすごく感じます。Coreの背中を見ながら、これは楽しいぞと思いながら踊っています」 Novel Core「僕はクルーのステージでは、好き勝手にやらせてもらうタイプなんです。今年は単独でも25本ぐらいフェスに出演して、昼にNovel Coreとして、夜にPOSSEとして出るフェスもあったんですけど、ソロとPOSSEでステージの感じ方が変わるというか。POSSEでは自分のパートも必然的に短くなるけど、その中でNovel Coreのアイデンティティをみんなに感じてもらうためには、どうしようかと考えるし。普段のソロでは、いろんなことに意識を向けながら戦っているけど、POSSEでは制約が少ないからこそ、むしろ考える余白が倍以上に増えています。真剣に遊ぶこととプロフェッショナルの部分が噛み合って、アーティストとしての意識が高まっている感じがします」