平昌五輪が閉幕──冬の帝国覇権争い、漢字文化圏の勃興、小平選手の行動
羽生と宇野にアウェイはない
さて氷系である。スケートである。これはフィギュアと、スピードと、アイスホッケーに分かれ、山ではなく平地、しかも湖の多い北国が強い。 特に、ロシアはチャイコフスキー(「白鳥の湖」を作曲した)の国でもあり、ソビエトは社会主義の優位を立証するためにクラシック音楽とバレーに力を入れたので、フィギュアスケートにも強く、少し前の男子のプルシェンコ、現在の女子のメドベジェワ(セーラームーンの大ファン)など、不思議に日本びいきの選手が多い。 そしてもちろん、このところ日本が強い。身体が小さいことが不利にならないことに加えてサポーターの力もある。羽生や宇野が氷上に登場すると大きな歓声が上がるのだ。おそらくどこへ行ってもそうなのだろう。日本から大勢の女性ファンが追いかけている。平昌では日本がアウェイ状態になることも多いが、羽生と宇野にアウェイはない。それはジャニーズやAKBといった現代日本のアイドル文化と無縁ではないだろう。 そしてカーリングという不思議な(理解が難しい)ゲームが人気急上昇中である。 スピードスケートは現在オランダが圧倒的だが、やはり水の多い平地の北国だ。そこに日本の女子が食い込んで、今回多くのメダルを獲得した。人口密度の高い海洋貿易国として共通し、歴史的な関係も深い。
アイスホッケーは戦争の代理ゲームか
アイスホッケーはもともと陸上のホッケーから転化したのであろう。一種の「球技」である。当然、前回書いたように「英米帝国」に関連し、その代表としてのカナダが圧倒的に強い。陸上のホッケーにおいてインドが強いこと、ラグビーで南半球の大英帝国圏が強いことにも呼応している。またそれに対抗する意味で、ロシアも東欧も力を入れている。 身体が猛スピードでぶつかり合ってゴール(王)を狙う戦闘的なゲームであるから、戦争の代理となりやすい。 カナダとロシア(ソビエト)は、歴史的にデッドヒートを繰り広げてきた。また「プラハの春」の際、ソビエトがチェコスロバキアに侵攻したあとの世界選手権においてチェコがソビエトに勝ったときは、国民が街頭に出て狂喜乱舞した。今回、南北朝鮮合同チームには韓国内に批判が強かったが「もし日本に勝ったら大成功になる」と、コリア・レポートの辺真一編集長がコメントしていたのが印象的であった。しかし日本はこれに快勝した。