平昌五輪が閉幕──冬の帝国覇権争い、漢字文化圏の勃興、小平選手の行動
雪原は北西欧と北東欧の争い
一方、ジャンプやクロスカントリー(距離)の競技をノルディックと呼ぶ。「北の、北欧の」という意味で、当然スカンジナビア諸国が本場である。アルペンがレジャーにつながるのに比べ、こちらは北国の移動方法としての生活につながる。 また雪国における戦争能力の象徴にもつながり、ジャンプとクロスカントリーの組み合わせの勝者をキング・オブ・スキーと呼び、クロスカントリーと射撃を組み合わせたバイアスロンという競技があるのも、このことをよく表している。そのことから、北西欧とともに北東欧圏(ロシアや旧東ドイツを含む)も力を入れ、冷戦構造を背景にした闘いが続いてきた。 ナポレオンもヒトラーも、ロシア(ソビエト)侵攻で、冬将軍に見舞われて敗北したように、雪原の移動は、ヨーロッパにおける覇権の重要な要素である。ソビエトが崩壊し東欧諸国は離れたが、仏・独・英・米に対抗する意味で、ロシアは今後も冬の帝国としての玉座を死守するだろう。 日本列島も、東北部と山間部は雪国であり、スキーは生活の道具であった。またロシア(ソビエト)、朝鮮半島、中国東北地方(満州)などを想定した軍事につながるところから、現在でもスキー場では自衛隊の演習がよく見られる。またいわゆる「山スキー」は、ゲレンデスキーとは異なり、登山の一種に属しクロスカントリーに近い。そんなことから、アルペンの牙城はなかなか崩せないが、高梨や渡部など、ノルディックにはそれなりの成績を残している。 特に近年の高梨沙羅の活躍は特筆すべきである。 あるテレビ局で、高梨選手のスキーがルンビ選手やアルトハウス選手のスキーより格段に短いことを見せていた。日本のジャンプ陣が強いことから、身長と体重によってスキーの長さを制限するというルールができたようだが、これはおかしなルールである。スケートのブレードや、テニスのラケットや、フェンシングの剣の長さを身長と体重で決めるなどということは考えられないではないか。こんなルールを決めるのは田舎の帝国だ。