「ふつうの会社員」にこそ知ってほしいマインドセット...不安定な時代を生き抜くために「起業家精神」が有効な納得の理由
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第11回 『このままだと日本が滅ぶ...起業ランキングで「圧倒的な最下位」を独走する日本の「残念すぎる現状」』より続く
「就職活動」ではなく「就社活動」である現実
多くの社会人、学生にとって、避けて通ることができないのが「就職活動」です。実はこの言葉、少し間違いがあると思っています。 こと日本では、正しくは「就社活動」ではないか。ほとんどの人が、仕事ではなく、会社を選んでいるのではないか。いい会社はどこだろう、自分がやりたい仕事ができる会社はどこだろう? 思うような会社が見つからなかったら、少しでもイメージが近い会社に。そして入社したら、会社が求める仕事をがんばって、まじめに勤めていく。そして、定年を迎える。 高度経済成長が続き、終身雇用が維持されたなら、こんな働き方にも一定の価値があったと思います。でも、もう10年以上前から終身雇用時代の終わりは叫ばれています。ジョブ型雇用、同一労働同一賃金、すべて終身雇用の仕組みの外にあるものです。
前世紀のやり方にとらわれるな
終身雇用は日本の伝統と思われていますが、実は、伝統というほどの歴史はありません。近代型の経済社会が日本に根付き始めたのは明治維新以降。本格的になったのは戦後といっていいでしょう。終身雇用の終わりが囁かれ始めたのは、21世紀に入ったころでした。 つまり、せいぜい半世紀のモデルなのです。ではなぜ、終身雇用という制度ができたのか。高度経済成長で経済は右肩上がり、ものを作れば売れる時代。企業は大量生産、事業拡大の一途で、とにかく人が欲しい。正確には労働力が欲しい。 そこで、「うちに入れば一生安泰だ。だから黙って働いてくれ」と、年功序列で退職まで給料が上がる終身雇用で報いる仕組みを作ったのでしょう。数十年にわたる人件費というと莫大な金額になりますが、それでも十分に利益が出る、それが高度経済成長だったのです。 バブル経済がはじけ、失われた10年、いや20年、30年と言われる時代があり、右肩上がりの経済成長なんていうものを知らない世代が多数になりました。私だって、高度経済成長は経験していません。そして、企業は終身雇用の負担に耐えられなくなった。 だからこそ、起業家精神、「変化の中に機会を発見し、事業を成功させる行動体系」が必要なのです。高度経済成長は、拡大こそすれ変化が少ない時代でした。しかし、いまは多様性の時代、変化の時代、予想不能の時代、VUCAの時代です。昨日まで絶好調だった企業が突然傾くし、聞いたこともないスタートアップが急成長する、それが当たり前の時代です。