「子どもらしい日々」取り戻す闘い…ウクライナの子どもたちは今 侵攻から2年5か月
子どもたちはお互いの経験を語り合うなどのセラピーを通して、親を失った悲しみに向き合い、受け入れていくといいます。 そして、「遊び」に多くの時間をあてるのもこのプログラムの特徴です。子どもらしく笑い、「楽しい」という感覚を取り戻すのが狙いです。 父親とよくサッカーで遊んだというアンドリーさん。キャンプへの参加後、「将来の夢」を語るようになりました。 アンドリーさん(12) 「サッカー選手になってレアル・マドリードでプレーしたい」 キャンプにはこれまでに450人が参加。今も多くの子どもが支援を必要としています。 Gen.Campを企画 オクサナ・レベデワさん 「『子ども時代』はすべての国と人々が守るべき、侵すことのできない神聖なものです。(戦争の)影響を減らし、彼らがまた人生を楽しめるようにしたい」
一方、東部の「前線の街」では「子どもらしい日々」を守る闘いが続いていました。 ウクライナ第二の都市・ハルキウ。ロシア国境からわずか30キロで、日常的にミサイルや砲撃が襲うこの街を、私たちは今年2月に取材しました。 市内の学校で見せてもらったのは、ロケットが直撃したという校舎の一角です。ハルキウ市では今、こうした危険を避けるため、地上の学校での授業は行われず、オンライン授業がメインとなっています。 そんなハルキウで大勢の子どもたちが向かったのは地下鉄の駅。その先にあったのは「学校」です。 去年9月に地下鉄の駅の空間を利用してつくられました。教室は空襲を避ける防空壕(ごう)を兼ねているため、子どもたちは安心して過ごすことができます。 エバ・ドゥホウナさん(当時9) 「ここで勉強するのが好きです」 エバ・ドゥホウナさん。侵攻開始直後、家の近くにミサイルが着弾し、姉がけがをしたのを目の当たりにしました。 ストレスで吃音(きつおん)が出たり、自分で髪の毛を抜くこともあったりしたといいますが、地下の学校にきて落ち着きを取り戻したといいます。
ハルキウ市はさらに多くの子どもが対面授業を受けられるよう、専用の地下校舎を新たに建設。5月から運用を開始しました。当面は「学校の地下化」を進める計画です。 取材から約5か月、ロシアの攻撃にさらされ続けるハルキウで、エバさん親子が今、望むものは… エバさんの母・ビクトリアさん 「平和な空です。子どものためにこれ以上何を望みますか」 エバ・ドゥホウナさん(10) 「戦争が終わってほしいです。地下ではない(地上の)学校へ行きたい。毎日のようにプールに通ったり、ピザやマシュマロを食べたりしたいです」 「子どもが子どもらしく過ごせる」、そんな当たり前の日々のための必死の努力が続いています。