【ラグリパWest】164センチでもFWでやれる。宮﨑達也[東京サントリーサンゴリアス/HO]
フランスのことわざがある。 <よく鍛えられた大男は、よく鍛えられた小男に勝る> 真逆のラグビー選手がいる。 宮﨑達也だ。身長は164センチ。この小ささでスクラムの中央、HOに入る。所属は東京サントリーサンゴリアスである。 「身長を不利に感じたことはありません。タックルに入りやすいし、入られにくいです」 笑うと目がなくなる。曲線が立体感に富む顔を作る。28歳ではなく、中学生っぽい。 宮﨑は閉幕したリーグワンで、短縮形「東京SG」の黄色いジャージーをまとい、ラスト4試合に連続出場した。皮きりは4月27日のBL東京戦だった。 後半24分、モールから左を突き、95キロある体をインゴールに沈みこませた。 「いいタイミングで出られたと思います。トライができて嬉しかったです」 2メートルを超え、日本代表でもあるLOのワーナー・ディアンズはグラウンディング阻止のため、下から体をあてがうことができなかった。小柄の優位点を存分に示す。 その6分後、トライのアシストをする。内返しのパスをPR小林賢太に通した。最後はWTB江見翔太がラックからダイブする。 「ああいうパスは得意です。求められていることができたと思います」 宮﨑は出場10分ほどで、1トライ、1アシストを決めたことになる。 このBL東京戦、27-36と敗れたが、宮崎は東京SG在籍2シーズン、33試合目にして、初の公式戦出場を勝ち取る。トライも社会人初。その前に2シーズン在籍して休部になった宗像Bを通してもなかった。 東京SGのHOは、先発が主将であり日本代表キャップ7を持つ堀越康介、控えは呉季依典(ご・きえのり)と相場が決まっていた。このBL東京戦、宮﨑は堀越に替わって後半20分からの出場だった。 リーグ15戦目まで宮﨑は2試合、リザーブ入りした。どちらも「堀越入替」のカードは切られなかった。 「やってやろう、という思いがありました」 これまでを否定的にはとらえなかった。 「そういう境遇の人が結構多いです」 リーグ優勝に絡む東京SGのレベルは高い。 5歳上の中村亮土(りょうと)からかけられた言葉は響いた。 「チャンスは必ず来る。来た時にくさっていたら100パーセントの力を出せない」 中村は不動のCTBとして日本代表キャップは39を数える。 その宮﨑には今、ルールの追い風も吹いている。胸骨から上へのタックルは、ハイタックルと判定され、ペナルティーが与えられる。相手チームには3点を失う恐怖がある。 この小さなHOを東京SGに導いたのは監督の田中澄憲(きよのり)だった。 「僕のことを覚えてくれていたようです」 宮﨑は京産大の3年生HOとして当時、田中がヘッドコーチだった明大と対戦した。54回目の大学選手権(2017年度)では、8強戦で明大が27-21で勝利した。 その田中の後押しもあり、2022年の11月、正式入団をする。 「どこも行くところがない状態から、東京SGに決まって、びっくりしました」 宗像Bの休部はその半年ほど前。3人目のエージェントが田中と旧知の間柄であり、話がつながった。スタートは練習生だった。 京産大からの入団も初めてだと聞いた。 「頑張って、このチームに長くおれたら、後輩たちも来やすくなると思います」 その京産大に進んだ理由を話す。 「トップリーグに入りたかった。そのためにはスクラムが強くないと、と思いました」 リーグワンの前身に自らを届かすため、強力スクラムの京産大入学を志願する。 スクラム練習は平日でも1時間。週末は2時間以上やった。当時、監督だった大西健(現・相談役)がつきっきりで指導した。 「スクラム練習が終わった後、タイヤ押しがあるのですが、それがきつかった」 四つん這いの姿勢を作って、トラック用のタイヤを押し、22メートルを往復した。 そのスクラムも含め、採用してくれた東京SGでは自分の役割を理解している。 「僕経由でみんなが活躍できるようにしたい。ボールを持って当たったり、抜いたり、キャリーするのが好きな選手が多いですから」 宮﨑は「僕経由」を確立させるため、日々のコミュニケーションに重点を置く。 「自分から話しかけて、その選手をもっと知るようにしています 意思疎通をプレーにつなげる。トレーニングはスクワットに注力する。追走、パスなど仲間を生かすのは下半身の安定が不可欠だ。 BL東京戦に続き、リーグ最終16戦目のS東京ベイ戦は先発できた。プレーオフ2試合も交替出場する。3位入りに貢献した。