世界同時株安、一部の金融関係者がひんやりと思い出した「LTCM破綻」と今回の暴落の「あまりにも類似する」正体
大学生のアキさん、高校生のルミさん、2人の娘を持つ個人投資家・文筆家の澤田信之さん。娘たちに「生きる視点」を伝言するメッセージ書評連載です。 【父から娘へ書評#7『「戦争経済」に突入した世界で日本はどう生きる』国谷省吾】
生き残れた金融マンならば思い出す「LTCM破綻」とは何だったのか
2024年8月5日は日本株投資家にとって忘れられない一日になりました。戦争も、テロも、災害も起きていないある日、日経平均は史上最大の幅で下落しました。 特に午後2時以降の価格形成は、主要銘柄がストップ安になり、それ以上売買ができないことで売りが先物に殺到、現物と先物の価格差が5%近くになるという前代未聞の動きでした。 さて、これは僕が金融機関に勤めていた頃の話です。昔も今も、ロシアという国は、投資家にとってとても扱いが難しい投資対象でした。 旧ソビエト連邦の解体で1991年に生まれたロシアは、90年代前半著しい不況に陥りますが、その後主要な輸出品である原油価格が上昇したことで経済が安定、国際資本市場に回帰します。 でもそれは長く続きませんでした。ロシアのような新興国市場の多くは米ドルに自国通貨をリンクしてインフレを抑える通貨政策を取っていましたが、多くの場合は金利差を背景にした投資資金が過剰に流入するせいで通貨が高止まりし、自国生産品の競争力を失うことになります。段階的に通貨を切り下げようとしますが、為替市場はそれを許しません。結果的に管理通貨制度を放棄し、変動相場制に移行することになります。 ロシアもその影響を受けました。国際資本市場では米ドル建て中心にロシア国債が流通していましたが、相対的に低金利である米ドルで資金を調達し同じ米ドル建てやルーブル建てのロシア国債に投資する動きが流行しました。 中にはロシア国債を担保に入れて資金調達し、さらにロシア国債に投資するといったレバレッジを強く利かせた投資も散見されました。そしてロシアは資金繰りの悪化から利払いを停止、国債の価格が暴落したことで世界的な株価の調整につながります。 これはLTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)という名前のヘッジファンドが破綻したストーリーです。