AMDが見据えるAIの未来 「AIはノーベル賞級の発見ができるか」
米半導体大手AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)はAI(人工知能)がつくる未来を見据える。今月、都内で開催された同社のイベント「Advancing Al & HPC 2024 Japan」はAMD製品のAI利用を紹介したほか、アカデミアからのゲストスピーカーがAIによる科学的探究の可能性を語った。 【関連写真】講演前にはAIで生成されたロボトム社長が登場した イベント冒頭の基調講演では日本AMDのジョン・ロボトム社長が同社の現況を説明した。講演前にはAIが生成したロボトム社長が日本語、英語、中国語、韓国語であいさつする動画が流れるなど、AIというイベントのテーマが強調された。 続いてテクノロジー&エンジニアリング部門シニアバイスプレジデントのサミュエル・ナフシガー氏が登壇。同社のポートフォリオを紹介しつつ、同社製品を用いたAIのユースケースについて話した。自動車分野では、SUBARUの運転支援システム「アイサイト」の次世代プラットフォームにプロセッサーを提供することを紹介。科学研究では、素粒子物理学の研究機関CERN(欧州原子核研究機構)の大型ハドロン衝突型加速器に同社のCPU(中央演算処理装置)「EPYC」が採用されていることを説明した。 「科学研究へのAI利用」が、複数のゲストスピーカーによる講演テーマとなった。理化学研究所(理研)計算科学研究センターの松岡聡センター長と沖縄科学技術大学院大学(OIST)の北野宏明教授が登壇。理研の取り組みやAIが実現する未来を展望した。 松岡氏は理研が運用するスーパーコンピューター「富岳」を紹介した上で、AIによるシミュレーションが「リアルな世界をモデル化して科学技術を進歩させる」との見通しを語った。今まで計算科学に近い分野で使われてきたAIの利用分野を増やすべきとの考えを示した。 OISTの北野氏はAIを18世紀の産業革命になぞらえた上で「まだ蒸気機関の発明の段階で内燃機関には至っていない」と現状を分析。創造性を持ったAI、さらには自律的に科学的発見を成し遂げるAIこそが進化の先にあると語った。北野氏は「AIがノーベル賞クラスの発見を自動的に行えるか」という問いを立てて研究をしているという。 AIを支える半導体。多くの半導体企業はAIの進歩を視野に入れる。単なるデータ処理だけでなく、自ら創造性を発揮し、科学的発見を成し遂げるAIこそが、彼らの見据える未来だ。
電波新聞社