変革に取り組んだダンロップの確かな手応え。ニュルで培った技術が生きたスーパーGTの戦い
住友ゴム工業モータースポーツ部は12月20日、兵庫県神戸市で『2024 DUNLOPモータースポーツ 感謝の会』を開催した。スーパーGT GT500/GT300クラスをはじめとする、ダンロップタイヤでコンペティションを繰り広げてきたドライバーや監督、関係者が集結した。 【写真】感謝の会で乾杯の挨拶を務めた中嶋悟監督 スーパーGT GT500クラス、GT300クラス、全日本ラリー選手権や全日本ダートトライアル選手権、全日本ジムカーナ選手権、TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2024といったタイヤコンペティションのあるシリーズにおいて、ダンロップタイヤでコンペティションを繰り広げてきたドライバーやチーム監督、関係者が招かれた感謝の会。コロナ禍以前は東京・赤坂で開催されてきたが、2024年は久々の開催となり、住友ゴム工業の本社がある神戸市での実施となった。 90名近い参加者が集うなか、住友ゴム工業の山本悟代表取締役社長も登壇。開会に先立ち、かつて緊張感の漂うレースウイークの最中、鈴鹿サーキットや富士スピードウェイのパドックでタイヤの入れ替えを行なっていたというエピソードも踏まえ、モータースポーツ活動に携わった関係者への感謝を述べた。 会場には各カテゴリーのタイヤ開発を手がける住友ゴム工業のスタッフも集結。そのなかには、スーパーGT GT500/GT300クラスにおいてダンロップタイヤの開発責任者を務める安田恵直氏の姿もあった。改めて安田氏に、12月8日にシーズン終了を迎えた2024年のスーパーGTを振り返ってもらった。 GT500クラスで唯一ダンロップタイヤを履くModulo CIVIC TYPE R-GTは、第8戦もてぎで3年ぶりのポールポジションを獲得する走りを見せたが、シーズンを通しては厳しい戦いが続き、シリーズ13位となった。 「GT500クラスは第4戦富士が節目でした。それまで導入するハードルが高かった技術を第4戦富士で投入することが叶い、競争力の高い状態で戦うことができました。ただ、2024年シーズンはウエット絡みのラウンドが多いシーズンとなり、ドライタイヤでテストを重ね、積み上げてきた部分を出し切ることができませんでした。とはいえ、手応えはある1年でしたので、この状態を続け、さらに積み重ねていけば結果はついてくると思っています」と、安田氏。 ダンロップではGT500/GT300クラスに向けて、タイヤ開発においてシミュレーションを使ったバーチャル技術を活用するなどの変革に取り組んだ。ただ、変革はそれだけに留まらない。 「2024年シーズンから変革に取り組みました。そのひとつが人員で、外部からも人を入れてタイヤ開発に臨みました。その効果が出ていた1年だったと感じていますし、今後も2025年シーズン、2026年シーズンと年々効果は出てくると思います。また、老朽化が進んだタイヤの製造設備に関してもこれから入れ替えを進めて行くため、今後新たな設備で製造したタイヤを投入できるという期待もあります」 一方、GT300クラスでは第3戦鈴鹿でD'station Vantage GT3がチーム初の優勝を飾った。D'station Racingはシリーズランキングでも4位という好成績を残している。 「GT300クラスではD'station Racingさんが高いパフォーマンスを見せました。実はGT500用タイヤの技術や、ファルケンとして参戦を続けているニュルブルクリンク24時間レースやNLSニュルブルクリンク耐久シリーズで開発した技術を投入したことで結果につながったこともあり、そこは良かったと感じています。ただ、他のチームさんではそれらが思うように機能しなかったところもあり、そこは真摯に受け止め、開発に反映していきます」 なお、ニュルで開発した技術が生きた部分は主に構造面だという。 「ファルケン・モータースポーツとしてポルシェ911 GT3 Rでニュルブルクリンクを戦っていますが、今のポルシェ911 GT3 Rはタイヤを設計することが難しいクルマです。逆に言えば、ポルシェ911 GT3 Rを速く走らせるタイヤの設計を理解できれば、他のクルマにも適用できます」と、安田氏。 「GT300では、タイヤ原料の配合関連でも進化しきれなかった部分もありましたので、2025年シーズンに向けてはシーズン開幕前のテストから配合にも力を入れたタイヤを試すことができればと思います」 なおダンロップは2024年、全日本ラリー選手権では全6クラス中4クラスでタイトルを獲得。全日本ダートトライアル選手権でも全10クラス中6クラスを制し、全日本ジムカーナ選手権ではPN1クラス、PN4クラス、BC1クラスを制した。例年激戦が繰り広げられる激戦GR86/BRZ Cupでは菅波冬悟(OTG 滋賀トヨタ GR86)が7戦中5勝を飾り、タイトルを手にしている。 他カテゴリーでは好成績を残すも、スーパーGTでは厳しい場面も多かった2024年シーズンのダンロップ。ただ、人員も含めた変革に取り組んだことでスーパーGTの両クラスでも確かな手応えを得ることができたシーズンとなったようだ。この手応えが、さらなる結果として現れる日を楽しみにしたい。 [オートスポーツweb 2024年12月21日]