【追悼】中川李枝子さん『子どもは、 あなたが思う以上に“お母さん”のことが大好きよ』|VERY
❝子どものイヤイヤには機転が必要。親なら一枚上手な切り返しをしたい❞
日々、忙しく過ごす中で、子どもの言動にイライラすることもあるでしょう。お母さんは子どもに反抗されたとき、即座に言い返すくらいのユーモアのセンスを持ちたいもの。そうしないと、いつだって自分勝手なことを言う子どもたちとは、とても付き合いきれません。ある女の子は夢中で遊んでいるとき「そろそろおしっこじゃない?」とお母さんに聞かれて、「昨日行ったんだからいいでしょ!」と怒ったり、うちの息子も昔、ピアノのお稽古を嫌がって、「ああ僕の本当のママはどこにいるんだろう。本当のママはピアノなんてやらせるはずがない」って(笑)。カッとして、「じゃあまたお腹に戻れば?」と言ってやったの。お母さんは頭を使って、子どもの意表を突くぐらいの切り返しをしないとだめよ。腹が立つことも多いけど、気を静めてノートか何かに書き留めておくといいわ。20~30年後に読み返すと本当に面白いんだから(笑)。
❝絵本が嫌いな子どもは一人もいない。一緒に読書する時間は至福のときです❞
限られた時間でも、子どもと本を読みましょうとよく言っています。『子どもはみんな問題児。』にも書きましたが、17年保育に関わってきて、絵本や物語が嫌いという子は一人もいなかった。「どんな本を選べばいいですか?」「読み聞かせのコツは?」という質問もよくされるけれど、何と言っても25年以上読み継がれているロングセラーには、長く愛されるだけの魅力があって、良い作品が多いわね。そして、お母さんも一緒に楽しんで読める本が一番。幼児には幼児向けの絵本、なんて年齢で区切らなくていいの。私は読み物の本も、時には新聞記事も面白いと思うものは何でも読んであげていました。子どもと一緒にたくさんの本を読んだけれど、疲れているときは、あえて早口の超特急で読んだことも(笑)。「読んであげなくちゃ」と真面目に頑張りすぎないで、子どもとの取り引きも大切なのよ。親子で本を読む時間は何よりかけがえのないものだけれど、「今日は疲れちゃった」と正直に言えば、子どもはこちらが考えるよりずっとお母さんの気持ちをわかってくれる。知り合いの子は、お母さんが具合が悪くて横になっているとき、「ママ、寝てていいよ。ぼくはこれ食べているから大丈夫」と、『ぐりとぐら』のカステラを作るシーンを自分で読んでいたそう。ホロリとするわよね。子どもは大好きなお母さんが困っていると、その気配をちゃんと察するものなんです。子どもを膝に乗せたり、添い寝をして、一緒に物語の世界に入っていける時期はほんの一瞬。すぐに子どもは自分で本を読めるようになって、一緒に読んでなんかくれなくなるの。いま、お子さんと読書ができるお母さんたちが私はとても羨ましいですよ。