【追悼】中川李枝子さん『子どもは、 あなたが思う以上に“お母さん”のことが大好きよ』|VERY
❝両親は仲が良いことが大事。問題は一人で抱え込まず相手に伝えて❞
お母さんが仕事復帰すると、育児や家事分担で夫婦仲が険悪になると聞くわね。育児は夫婦二人がかりでも大変なんだから、それを働きながら母親が一人でやるのはどれほどの苦労かと思います。子どもや家庭のことで何か悩みがあったら、絶対にお母さん一人で抱え込まないで。「言っても仕方がない」「わかってくれない」と思わないで、言いたいこと、言うべきことは説明するべき。育児の情報量ではお母さんにかなわなくても、男性は思いもよらない角度から客観的に子どものことを観察していて、こちらが驚くことも多いのです。私も夫とはよく喧嘩しましたよ(笑)。でもなるべく子どもには見せないようにしてた。両親が険悪なムードになると、息子に「なんだかこの家は暗いなあ……」なんて言われてハッとしたりね。お母さん自慢は大好きな子どもたちも、両親が喧嘩した話は、誰も保育園でしないものなの。
❝園での様子を語らなくても大丈夫。子どもはいまを全力で生きています❞
子どもたちも保育園や学校ではそれなりに緊張して、いつも全力で過ごしています。園でできることが家ではできなかったり、お母さんの前では拗ねて言うことを聞かなかったりすることも多いでしょう。でも家に帰ってきてホッとひと息ついた子どもに、「どうして家ではできないの?」なんて言ってはダメ。 園の様子を、子どもがあまり詳しく話してくれなくて心配、というお母さんもいるけれど、子どもは過去の話にあまり興味がないものよ。だって常に目の前のことに全力で向き合っているんだから。そしてもうひとつ、保育園ではお父さんお母さんには教えたくない、子どもたちと先生だけの秘密の話もある。その秘密を守ることで、私たちは子どもと信頼関係を作っているの。もちろん、親に伝えるべきことや緊急のことはお話しするけれど、園でのことをすべて知ろうとして、根掘り葉掘り子どもに聞かなくてもいい。それでも子どもにとっては、お母さんのいる家庭が一番リラックスできる安全地帯だから、家では子どもをよく見て、たくさん話しかけてあげてほしい。もし家事の合間でちゃんと相手をできないなら、「うん、うん」「そうなの?」と合いの手を入れてあげるだけでもいいんです。いつもよく見ていれば、何か変わったことがあったときに気が付くはず。それでも不安になるときは、保育士や先生をもっと頼れるといいわよね。 いまは、保育園に入るだけでも大変で、子どもに合った保育園を選ぶような余裕をなかなか持てない時代。でも、困ったときに頼りになる、きちんと保育の勉強をした先生、経験を積んだベテランの先生が絶対に必要です。むやみに保育園の数を増やして、安月給で雇うなんてとんでもない話よね。私が働いていた保育園では、連絡帳や園だよりもあえて作りませんでした。保護者に伝えるべきことはすべて口頭で話して、それで十分事足りていた。今の保育士さんは、子どものお昼寝中に連絡帳を書いたり事務作業に追われているそうね。私の保母時代には、時には子どもと一緒にお昼寝しちゃうことだってありました。私の働いていた時代と状況は変わっているし、保育園での様子を親がよく知っておきたいという気持ちもわかるけれど、今の保育士さんは常に時間に追われていてちょっと心配になってしまいます。保育時間はすべて、子どものために使えるのが一番良いと思うのだけど。