JR東日本社員の情熱で実現。“駅メロのカリスマ”が語る、最新駅メロ「JR-SHRシリーズ」制作秘話
プロを唸らせたマニアックなダメ出し
プロの作曲家として、「受けた仕事は平等に取り組む」と決めているという塩塚さんですが、『JR-SHRシリーズ』の依頼は、「さすがにジーンときました」と表情がほころびます。
鉄のみゅーじしゃん 塩塚博 (しおづか・ひろし) 百貨店に勤務した後、CM音楽制作会社に入社。ディレクターとして1年間勤務し、自らもCM音楽の作編曲数本を手がける。30歳のときに作編曲家・演奏家として独立。以来、レコード、CM、テレビ・ラジオ番組、駅発車メロディーなどの作編曲で幅広く活躍している。特に駅メロは、駅ホームに約220作品を提供(2024年現在)。その世界の第一人者「鉄のみゅーじしゃん」として脚光を浴びる。駅メロのメッセンジャーとして講演活動も展開中。
塩塚「『JR-SHRシリーズ』を僕に依頼してくれたのは、40代前半のJR東日本の社員さんたち。彼らは学生時代に僕の駅メロのファンになり、JR東日本に入社しました。 そして、『いつか駅メロを統括するような立場になって、塩塚さんにお願いするのが夢でした』と教えてくれました。 僕に面と向かって夢を語ってくれるのは嬉しかったですし、そこまで言われると胸が熱くなりますよね。 何曲使われるか分かりませんでしたが、僕自身、駅メロを作曲するのが久しぶりなこともあって、とても爽快な気分で20曲を作曲しました。今回は9曲採用されましたが、実は未採用曲の中にも、自信作があるんですよ」 「JR-SHRシリーズ」の完成までには、ファンならではのマニアックなお願いもあったそうです。
塩塚「たとえば、曲の終わりを普通の終止形ではなく、偽終止(主和音以外のギミックな終止)にしてくれませんかとか。そういったマニアックなダメ出しを多くいただきました。 『JR-SHシリーズ』のように、それぞれ音色違いも用意してほしいとお願いされて、実際に採用された楽曲は全9曲ですが、すべてキー・音色違いの2バージョンの全18バージョンを最終的に制作しました。 ここまで細かくディレクションを受けるのは初めての経験でしたが、駅メロや僕の作品の特性を極めて深く理解しているのが分かって、嬉しかったですね」