免許証取得後1週間の息子にロングドライブをさせてみたら……
自動車ジャーナリストのレジェンド岡崎宏司氏が綴る、人気エッセイ。日本のモータリゼーションの黎明期から、現在まで縦横無尽に語り尽くします。 岡崎宏司の「クルマ備忘録」 クルマの運転はいかにしてうまくなるのか。自動車教習所で教えてくれるのは基本だけ。あとは個々に経験を積むしかありません。今回は自動車評論家一家ならではの、ちょっと変わった家庭内教習のお話です。
運転免許証取得前後の、わが家のしきたり!?
前にも書いたが、僕は16歳で運転免許をとった。1956年のことだが、当時あった小型4輪(1500cc以下)免許だ。 その後すぐ小型4輪免許は廃止。普通免許に統一され、免許年齢も18歳に引き上げられた。つまり、僕は16歳から運転できたうえに、何もせず普通免許に格上げされたことになる。なんともラッキーだった。 僕は運転教習所には1度も通っていない。16歳になってすぐ免許試験場に行って試験を受け、一発合格した。
当時でも一発合格率は低かったが、それを16歳になったばかりの若輩者がやってのけたのだから、僕は得意満面だったはず。でも、教習所にも行かずに一発合格したのには、当然ワケがある。 僕には9歳年上の兄がいたが、この兄がクルマ好きで、僕はその恩恵に預かった。兄がクルマを買ったのは、僕が12歳(1952年)の時。まだ、クルマが「超貴重品」だった時代だ。 記念すべき「わが家第1号車」が納車された夜、僕は興奮してクルマから離れられず、食事の時以外は運転席に座り続けた。翌日、ほとんど一睡もせず学校に行ったが、眠気も疲れもなかったように思う。 そして、学校から帰ったら、クルマへと一直線。兄の都合がいい時は「ちょっとでもいいから、、」とせがんで走ってもらった。
そんな「熱さ」は時間の経過と共に収まっていったが、次なるステップとしては当然「運転したい」気持ちが募ってくる。 とはいえ、いくら優しくて甘い兄でも許すはずはない。「16歳が近くなったら(免許が取れる日が近くなったら)なにか考えるから、それまでは絶対にダメ」とキツく言われた。 でも、、たしか15歳になった頃だったと思うが、、「そろそろ車庫入れの練習くらいはしておこうか」と言い出した。 当時のわが家の車庫は、ちょっと広い庭の一角にあった。だから、公道にはまったく出ないで車庫入れの練習はできる。 1速と後退のギア操作を繰り返し、微妙なクラッチ操作/アクセル操作を繰り返す。ハンドル操作も車両感覚の掴み方も練習できる。 僕は結構短時間で車庫入れをマスターした。そして次に取り組んだのはクランク走行。庭に障害物を置いて即席のクランクをつくり、そこを前進と後退で通り抜ける練習だが、これもすぐクリアできた。