仕事にすべてを捧げる、三遠ネオフェニックス吉井裕鷹の熱き思い「試合に勝つ、優勝する以上に自分の欲を満たしてくれるものはない」
「仕事で結果を出すのが、やっぱり人間として1番うれしいかもしれない」
2022年夏の日本代表デビューから吉井は『日本代表として』という、代表をキーワードにした質問を何度も受けている。その頻度は、パリ五輪での活躍によってより増しているだろう。だが、代表に選ばれる、選ばれないによって吉井に何か変化が起こることはない。そこには、プロバスケットボール選手・吉井裕鷹のブレない職業観がある。 「ずっと、良くも悪くも仕事だと思って取り組んでいるので。その中でも楽しさはありますが、大前提として仕事なので。自分が日本代表だから何かしなくちゃいけない、点数を取らなきゃいけないとかはなく、僕にできる僕の仕事をし続けるだけ。監督、コーチ達が僕に求めているモノをしっかり遂行していくだけです」 そして、「上積みは、土台を固めたら自然に出てくるものだと思うので、とにかく求められることをやり続けることが一番大事だと思っています。それをやっていれば僕の動きがチームに還元できます。それでチームの勝利に近づいていくのがいいことです。チームの勝利以上にうれしいことなんてないです」とも言う。それでも、昨シーズンまでは勝利に貢献できないことへのもどかしさもあった。個人のスタッツについては全く気にしていないが、もっとチームの助けになりたいと吉井は強く願う。 「(A東京での)4シーズンは試合に出て還元できることは少なかったです。勝利しても苦しい時も多かったですが、それでも負けるよりも勝った方がうれしいです。自分が活躍するとかではなく、チームで構築したバスケが相手チームにハマったりとかした時は気持ちいいですね。自分一人で守り切れるのも気持ちいいですが、勝つためにバスケをやるので、うまいこといったら全部楽しいです。結局、個人の活躍ではなく、チームに還元できることにうれしさを感じます」 A東京で出場機会に恵まれない時、バスケットボールから離れてリフレッシュを図ったこともあった。だが、そこであらためて感じたのは自身の人生に占めるバスケットボールの大きさだった。「アルバルクでDNP(出場なし)になって他のことに時間を使ったとき、やっぱり試合で活躍するのが一番の刺激だなと。試合に勝つ、優勝する、活躍するとか以上に、自分の欲を満たしてくれるものはないのかもと思いました」 「プライベートで遊ぶことも気晴らしになってしまう。現実逃避と言いますか、マツコ・デラックスさんが前に『仕事以外に生きる価値って何があるのか……』みたいなことを言っていて、自分も仕事で結果を出すことがやっぱり人間として1番うれしいのかもしれないですね」 新天地で主力としてのプレーが予想される吉井にとって、今シーズンは切望した仕事で結果を出すための舞台が整ったことになる。三遠のさらなる飛躍をもたらす切り札として、彼の攻守に渡るハッスルプレーは見逃せない。
鈴木栄一