私立大の「共通テスト利用入試」は受けたほうがいいの? 「利用者が減少するだろう」と専門家
私立大志願者にとっては厳しい
受験生にとって共通テスト利用入試は、どのようなメリットがあるのでしょうか。 「共通テストを受けるだけで複数の大学に併願できることが、一番のメリットといえるでしょう」と石原さん。特に地方に住んでいる受験生にとっては、試験を受けるためにあちこち移動する負担がなくなります。また、出願しておくことで、志望校にチャレンジする機会が増えます。ただし、「私立大志望の受験生が共通テスト利用で合格をもらうのは厳しい」と石原さんは話します。 「現在の共通テストはセンター試験とは違って、私立大が独自に実施する試験の問題傾向と大きく異なります。問題量が多い割に試験時間は短く、複数の教科をまたいだような問題もあります。そのため、共通テスト対策をしてこなかった受験生にとっては難しいですし、大学側も共通テスト利用入試によって、国公立大志望で多教科を勉強している受験生を確保したいという狙いがあります。その証拠に最近、MARCHや関関同立では、3教科ではなく、4~6教科の科目を課す大学も出てきています」 2025年からは新しい学習指導要領による入試になり、科目や試験内容が変更になります。 「例えば共通テストで地理歴史、公民から選択する場合、文系では歴史は『歴史総合、日本史探究』、あるいは『歴史総合、世界史探究』から選ぶことになります。歴史総合は近代以降の世界史も範囲なので、私立大の独自試験に向けて日本史しか勉強していない受験生にとっては、厳しいですね。国語も探究型の問題が出るので、私立大のマークシート形式だけの勉強しかしていない受験生には難しいと思います」 こうしたことから、石原さんは「25年度入試では私立大で共通テストを利用する志願者は、難関大を除く単独型は減少するだろう」と予想します。
併用型はチャンス?
独自試験と組み合わせる併用型を実施している大学はどうでしょうか。 「共通テスト利用入試で課す独自試験が、一般選抜の問題に近い大学は、場合によってはチャンスが広がるかもしれません。例えば立命館大学の併用型の独自試験は、文系なら国語+英語です。これらの教科が得点源になれば、受かる可能性は高くなります」 一方で、例外となるのが早稲田大学、上智大学、青山学院大学などです。 「これらの大学の独自試験は、総合問題や記述式など、それに特化した対策が必要となります。ほかの私立大と一線を画した入試によって、優秀な学生を受け入れることを目指しているようです」 25年入試から共通テストを新たに利用する私立大もあります。早稲田大学はすでに政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部で共通テストの受験が必須ですが、新たに社会科学部と人間科学部でも、共通テストと学部独自試験を組み合わせる入試方式になります。つまり、共通テスト利用が必須となるわけです。 青山学院大学は、文学部、教育人間科学部、国際政治経済学部の共通テスト利用で、従来の3科目型だけではなく4科目型または5科目型を新設します。 共通テスト利用入試といっても、その方法はさまざまです。併用型の場合は独自試験でどのような問題が出されるのかなど、志望大学の傾向を調べておく必要があるでしょう。 石原賢一(いしはら・けんいち)/教育ジャーナリスト、大学入試アナリスト。京都大学工学部卒。1981年、駿河台学園駿台予備学校に入職。高卒クラス担任、高校営業、講師管理・カリキュラム編成、神戸校校舎長などを歴任したのち、2006年から18年間、入試情報部門の責任者として各種マスコミへの情報発信、大学、高校での講演などを数多く担当。24年3月に退職し、現在は43年間にわたる予備校での経験を生かし、少子化が進むなかで大きな岐路に立っている高大接続の現状や今後についての分析、発信を行っている。
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