あまり報道されない重傷事故の「その後」 被害者の母親と、足切断の男性が語った苦難
全国で起こる交通事故。年間の死者数は3000から4000人で、ケガをする人は毎年約50万人にのぼる。事故で重傷を負った被害者が、その後どうなったかについてはほとんど報道されない。今回、娘が車にはねられた母親と、追突事故で足を切断した男性を取材。事故後の想像を絶する苦しみや、損害賠償をめぐる保険会社との裁判について聞いた。(取材・文:ノンフィクション作家・柳原三佳、撮影:加藤誠夫/Yahoo!ニュース 特集編集部)
娘を襲った突然の事故
「交通事故のニュースは毎日のように流れています。でもまさか、自分の娘が事故に遭うとは思いませんでした。過酷な “その後”があることも、知りませんでした」 涙ながらにそう語るのは、首都圏在住の山本恵子さん(40代・仮名)だ。次女の真由さん(20・仮名)が事故に遭ってから4年が経過した。当時の記憶がときどきよみがえり、胸が締めつけられるという。
事故は2016年11月5日の土曜日に起きた。当時高校1年生だった真由さんの初めての文化祭の日だった。 「『楽しんでくるね』と娘は嬉しそうに、朝、学校へと向かいました。夕方になって、そろそろ帰宅を知らせるLINEが入るころだなあと思っていたら、見知らぬ番号から携帯に着信があったんです」 普段は発信者不明の電話には出ない恵子さんだが、このときは胸騒ぎがして着信ボタンを押した。 「警察からの電話でした。『お嬢さんが車にはねられて危険な状態です。すぐに病院に向かってください』と。私は何が起こっているのかわからず、混乱したまま仕事先の夫に連絡し、急いで車で向かいました』
病院に着くと、救急外来の受付付近で次女と同じ学校の制服を着た女子生徒が震えていた。 「真由のお友達だよね。けがはない? 大丈夫?」 恵子さんが声をかけると、女子生徒はおびえたように答えた。 「学校の帰り道、真由さんは私の目の前を歩いていたんです。声を掛けようと思ったら突然大きな音がして、目の前からいなくなって……」