リアルすぎる女子高生CG「Saya」が挑む“不気味の谷”とは何か
あるクリエイターが公開した1枚の3DCG(3Dコンピューターグラフィックス)が、国内外のメディアで大きな注目を集めています。「Saya(さや)」と名付けられたこのキャラクターは、一目見ると本物の女子高生と勘違いしてしまうほどリアルで、この少女の姿を見た瞬間に「可愛い!」と素直に感じた人も多いのではないでしょうか。見た人が素直にそう思った瞬間、このCGは人型ロボット製作やバーチャルリアリティにとっての大きなテーマである“不気味の谷”を超えたのかもしれません。
“不気味の谷”とは何か?
「Saya」が超えようとしている“不気味の谷”とは、一体何のことでしょうか。これは、人間をはじめとする生物の姿や動作をロボットや合成音声、CGといったバーチャルリアリティで再現したとき、私たちはある一定までは好意を持って接することができるのに、“ほぼ忠実”というレベルまで精巧に再現できると、とたんに嫌悪感を抱いてしまうという法則で、ロボット工学の第一人者だった東京工業大学教授(当時)の森政弘氏が1970年に提唱した考え方です。 確かに、私たちはCGのアニメーションで可愛らしく描かれたキャラクターを見たときなどは「可愛い」と感じて愛着を抱きますが、リアルすぎるCGや精巧に作られたアンドロイドを見たときなどは「すごい」という驚きと共に「なんか気持ち悪い」「ちょっと不気味」と感じることが多いのではないでしょうか。この「気持ち悪い」「不気味」という違和感を覚えることが「“不気味の谷”に落ちた」状態だと言うことができます。例えば、タレントのマツコ・デラックスさんを忠実に再現して話題になったアンドロイド「マツコロイド」は、テレビに登場してその精巧さに驚いた半面、「なんか不気味だ」と思った人も多いのではないでしょうか。その感覚が“不気味の谷”に落ちた状態なのです。 当然、この状態ではその対象であるバーチャルリアリティに好意を持ったり感情移入をしたりすることはできません。むしろ抱いた嫌悪感を理由に接触を敬遠してしまう恐れさえあります。そのため、ゲームやアニメのキャラクターを考える際に、クリエイターはこの“不気味の谷”に落ちることを避けるためにあえて忠実度を下げたり、一部をデフォルメした表現にしたりするほどです。例えば、人気キャラクター「初音ミク」は、開発時にこの“不気味の谷”を避けるためにあえて合成音声の忠実度を下げたと言われています。