リアルすぎる女子高生CG「Saya」が挑む“不気味の谷”とは何か
不気味の谷を越えた先に見える、コミュニケーションの新世界
では、この“不気味の谷”を超えることができるバーチャルリアリティには何が求められるのでしょうか。それは、100%忠実なリアルな人の姿をバーチャルの力で生み出すことだと言うことができます。「Saya」を例に取ると、まるで本物の女子高生をカメラで撮影したような、究極の写実性を実現すること。髪や肌の質感、表情、佇まい、どれをとっても本当の女子高生だと言われても違和感が全くないレベルの「自然さ」を表現することであり、コンピューターが描いたことを全く感じさせないレベルの高精細さ、表現の繊細さが要求されます。どこか1点でも違和感を覚えた瞬間に“不気味の谷”に落ちてしまう、リスクの高い創作活動です。 しかし、「Saya」はその完成度の高さから“不気味の谷”を超えるのではないかと言われています。そしてその先に見えてくるのは、人間とバーチャルリアリティの間に“感情を含んだ”コミュニケーションが生み出される世界です。 私たちは、バーチャルリアリティで表現された物体を前にして、自分の感情を自然に表現することはありません。それは、対象のバーチャルリアリティはあくまでモノであり、無機質で無感情なものだということを無意識のうちに理解しているからです。しかし、究極の写実性を実現して“不気味の谷”を超えたバーチャルリアリティに対しては、リアルな人に対して感じるのと同じ感情を抱き、リアルな人に対して感じるのと同じ感覚で接する可能性があります。 これによって、バーチャルリアリティが私たちの日常生活の様々なシーンで接するインターフェイスとして進化したり、新たなエンターテインメントを生み出したりすることが期待されます。例えば、お店で接客する相手がCGだったとしても、リアルな店員と会話するのと同じように自然なコミュニケーションが可能になる世界です。実際に、冒頭の画像を見て、CGだということを知らずに「この子に一目ぼれした」「この子のことがもっと知りたい」と本気で思った人は、“不気味の谷”を超えた先にある新次元のバーチャルリアリティを体験しているのかもしれません。