「自然に曲がる」を追求 新型Mazda3 マニアックに試乗解説
昨秋のロサンゼルスモータショーで世界初公開され、流麗な魂動デザインやスカイアクティブ(SKYACTIV)Xエンジンで注目を集めた新型Mazda3(国内名アクセラ)。アメリカで先行して発売され、日本でも年内の登場が噂されている。このマツダの新世代車に、モータージャーナリストの池田直渡氏が米カリフォルニアでひと足先に試乗した。どんな乗り味で、何が進化したのか。「クルマが曲がる」メカニズムについてタイヤの変形に着目し、池田氏が少しマニアックに解説する。 【画像】マツダ新型「Mazda3」に先行試乗 さらに進化した「理想の座らせ方」
過渡特性にこだわったMazda3
ウェスト・ハリウッドのホテルに戻ってクルマを降りる時、ちょっと途方に暮れた。Mazda3はとても良い。結論はそういうことで決まった。ただそれ以上にどこがどう良いかを書くのは至難の技だ。 まず、これと言って穴がない。もちろんゼロではないが「ここさえ良ければ」的に書ける部分がない。強いて言えばパワートレインにもう少し存在感があっても良いかとは思うが、日本マーケットで主役になるであろうディーゼルと「SKYACTIV-X」は今回の試乗メニューにない。要するにエンジンのメインディッシュはまだ出てきていないのだ。前菜だけのタイミングでそこにダメ出ししても仕方ない。 あるいは、特に感心させられたブレーキの何がどう良いのかを説明するためには、これまでのブレーキがどうダメかを書かなくてはいけない。毎日カップラーメンを食って良しとしている人には、人間の体を作る栄養素の基本から説明しないと分からないのと同じで、今知っている「普通」が、本当は普通じゃないことから説明しなくてはいけない。 そういう基礎講座みたいなものを、ブレーキだけじゃなくて一つひとつクルマの全部についてやらなくてはならない。月曜日掲載の記事「新型『Mazda3』に先行試乗 さらに進化した『理想の座らせ方』」でそれをやった結果、シートとボディとブレーキだけで正味4900文字になった。毎度長い長いと言われる筆者の記事基準でもゆうにいつもの2割増だ。 さて、どうしたものか? まあ悩んでも1文字も埋まらないので手を動かすことにする。まずはクルマの簡単な紹介からだ。目の前に並んでいるのは北米仕様のセダンと欧州仕様のハッチバックの2台で、セダンには北米専用となるSKYACTIV-G 2.5が6段ATと組み合わされる。タイヤはオールシーズン。対するハッチバックはと言えば、こちらは欧州モデル。SKYACTIV-G 2.0にベルト駆動式のマイルドハイブリッドを追加し、これを6段MTで走らせる。タイヤは普通のサマータイヤだ。 クルマの出来が良いと冒頭に書いたが、それはフィールとして何がどのように良いのか? それは「クルマが曲がる」という一連の挙動の過渡特性を一つひとつ検分して、連続性を作り出したからだ。と書いても、ほとんどの人には分からないだろう。なので、これからタイヤの仕組みの講義を始めたい。どうやっても簡単には書けないので面倒な人は「過渡特性にこだわったのがMazda3なんだよ」という理解で勘弁して欲しい。