<高校サッカー>最北端Vの青森山田は、いかに雪国ハンディを克服したか
3月も下旬になると、ようやく積雪量も減ってくる。ブルドーザーを入れて人工芝のグランドの4分の1ほどを除雪した後に、黒田監督やコーチ陣、そして選手たちを喜ばせる瞬間が訪れる。 「選手たちのお尻周りの筋肉が、ものすごく発達しているんですよ。キックの飛距離が伸びたとか、シュートのパワーが増したとか、そういったことを実感できる。雪が積もらない場所だと、いつ伸びたかがわからない状況もあると思うんですけど、私たちは春が訪れ、雪解けの時期になるとスイッチが入るんです」 こう語る黒田監督は、苛酷な自然条件が体だけでなく、心の強さをも育んでくれると力を込める。 「逆境や我慢、辛抱するといった環境があればあるほど選手はよく考えるし、練習以外の時間でも工夫も重ねて、結果として成長していく。雪というものは私たちのパワーの源になり、精神的な支えにもなる。そういうことを、選手たちもよく理解してくれています」 青森県内では敵なしの王国を築きあげ、Jクラブのユースを交えて2011年の創設された高円宮杯U‐18サッカーリーグでも、最高峰のプレミアリーグで戦う東西の合計20チームに名前を連ね続けてきた。 全国の舞台に最も近い存在であり、なおかつプレミアリーグEASTでハイレベルの戦いも経験できる。日本有数の豪雪地帯であることを承知のうえで、自分自身を鍛えたい者、より成長して次のステージに進みたい者が他の都道府県から青森山田の門を叩くようになった。 FC東京U‐15深川からU‐18への昇格がかなわず、「必ず見返してやる」と臥薪嘗胆の思いを胸に秘めて入学した廣末もその一人。青森山田の練習に参加した瞬間に関東圏内の候補校をすべて消去し、親元を離れる決意を固めたU‐19日本代表GKにも、大雪は新鮮な驚きを与えた。 「初めてのときは体育館で練習するものだと思っていたら、雪の上で走る、それが伝統だと言われて。本当にきつかった思い出しかないけど、とにかくもがいて、もがき続けて、自分の限界というものを作ることなくチャレンジしてきたことで、ここまで成長できたのかなと。ひと冬を越えると、サッカーができる環境に対する感謝の思いがものすごく大きくなって、試合や練習に常に120%のパフォーマンスで臨めたのもよかったと思っています」