<高校サッカー>最北端Vの青森山田は、いかに雪国ハンディを克服したか
青森山田中学と連動した、6年間の一貫した指導で成長する地元・青森の子どもたちに、高校からは高い志を抱いた他県の有望株も加わる。それでも、なかなか選手権で結果を出せない。3回戦までに姿を消した大会が17度も数えた現実に、黒田監督も自問自答を繰り返した時期があった。 苦悩する青年監督の背中を押してくれたのが、帝京(東京)の古沼貞雄元監督、鹿児島実業(鹿児島)の松澤隆司総監督といった高校サッカー界の重鎮たちだった。 「行くときには一気に行く、余計なことはいっさい気にするなという言葉を頂戴しまして。指導者とは地道な作業で、いつ結果が出るかわからない。だからこそ、自分がやってきたことを信じて、選手たちに嘘偽りのない日常を、1分1秒を無駄にしない時間をすごさせることを積み重ねてきました」 そのなかでひとつの結論にたどり着いた。ポゼッション型、堅守速攻型、リスタートを重視する型と、臨機応変にすべてのスタイルに対応できるチームにならなければインターハイ、プレミアリーグ、そして選手権ですべて上位に顔を出すチームにはなれない、と。 インターハイではベスト4で敗退したものの、パスをつないでくるJクラブと対峙するプレミアリーグでは堅守速攻型で対応。EASTに続いて昨年末に行われたサンフレッチェ広島ユースとのチャンピオンシップも制して、高校年代の実質日本一になった。 迎えた今大会でも縦に速いチームには堅守速攻型で確実に勝利し、コンビネーションを駆使する前橋育英との決勝ではポゼッションと決定力の高さで上回った。 「やってきたことは正しかったと、選手たちが身をもって証明してくれた。その意味では、選手たちに本当に感謝したい」 鍛え抜かれた体と心に、技が上塗りされてつかんだ初優勝。悲願をかなえた黒田監督の瞳が、再びちょっとだけ潤んでいた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)